「一番繰り返し観ているのは、『Woman』と『問題のあるレストラン』。毎年数回は見返します。めちゃくちゃ観ているから、意識はしていないですが、影響を受けている部分はあるかもしれません。私自身、会話シーンを書くのは大好きです。あくまでキャラクターを作り込んで書いていく。このキャラクターならこう喋る、というところから逸脱しないように意識しています」(生方氏)

なぜ40代、50代からの支持が厚いのか?

「silent」の特徴は若い世代だけでなく、40代、50代からの支持が厚いこと。「こんなに泣けるドラマは何年ぶりだろう」などの声が殺到している。

 生方氏に尋ねたところ、

「私は正直、ラブストーリーというのもあって、同世代の女性が(視聴者の)メインになるだろうな、というくらいしか思っていなくて、あまり上の世代や男性にはウケないんじゃないかという軽い気持ちでした(笑)」

 プロデューサーの村瀬氏は、「信長協奏曲」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」など数々のドラマを手掛け、「約束のネバーランド」「キャラクター」など映画のプロデュースも担ってきたヒットメーカーだ。

 その村瀬氏はこう明かす。

「実は40代以上の女性の皆さんはこういうラブストーリーを見たいと思ってるんじゃないのかなという感覚を抱いていました。今回、脚本の生方さんや風間太樹監督などすごく若いスタッフに集まってもらっていて、彼らの若い感性を生かして作っているのですが、唯一のおじさんである僕の中では密かに、40代以上の女性たちが観ていたかつてのドラマの空気感を大切にしています。そこは狙いました。その世代のスターである篠原涼子さんにご出演頂いているのもそう。でも、生方さんはそこを全く意識して書いていない。僕からは『20代だから書けるものを書いて』と言っていたので」

 具体的にはどういうことか。

 

「障害があるとかではなくて、“本気で人を好きになる”という純粋な気持ち、それを生方さんの感覚で書けば、かつてドラマを好きだった人たちがまた戻ってきてくれるんじゃないかと思っていました。彼女には、幅広い世代の心に響くものを書ける力があると考えていましたので。実際に、これほどの反響を頂けて、嬉しい限りです」(同前)

2022.11.04(金)
文=「週刊文春」編集部