教育熱心で裕福な家庭の子が苦しみを抱えている。

大空 経済的支援ももちろん大事ですが、子供たちに限って言えば、親が教育熱心でお受験をするような、どちらかというと裕福な家庭の子のほうが苦しい気持ちを抱えているんですね。

 大人の自殺者数は失業率と相関関係がありますが、子供は別です。いい学校やいい会社に入るという、親の目標が自分の夢にすり替わり、親を喜ばせるためにいい学校に入らなきゃいけないと思い込みます。友達と遊ぶ時間もゲームをする時間も犠牲にして勉強する。そこで成績が下がったり受験に落ちたりすると、生きる目的を失って、親からも見放されるのではないかと絶望する。そういう子たちにとっては、「成績が良いこと」=「学校での存在意義」なので、自分の存在自体を認められなくなってしまうんですね。

内田 「あなたのいばしょ」に寄せられる子供たちの悩みは、いま、そういう声が一番多いですか?

大空 悩みは複数の問題が重層的に絡み合っているので、一番を決めるのは難しいですが、そういう相談はとても多いです。でも、もっと多いのは、「自分が何について悩んでいるのかわからない」という相談ですね。いじめられているわけでも、親との関係も悪くないのに漠然と死にたくなってしまう。

内田 そういう得体の知れない生き辛さを抱えているんですね。自殺の原因もわからないケースが多いと聞きます。それは周りが追求してこなかったからですか?

大空 追求の仕方もわからないんですよね。子供の場合、親や先生に心配をかけたくないと、遺書を残さずにひっそり亡くなるケースも少なくないので。

 自殺未遂は自殺者の10倍いると言われています。死にたいという思いは同じなので、これからは未遂した方の話を聞いていくべきなのではないかと話しています。悩みを一つ抱えたときに、誰にも相談できなくて、徐々に悩みが積み重なっていきます。悩みがまだ少ない段階で、周りといかに繋がるかが必要なんだと思います。

2022.10.08(土)
文=黒瀬朋子
写真=鈴木七絵(大空さん)