次につながっていく物語

 最後にCREA読者にオススメの作品を訊くと、心が潤う2作品を教えてくれた。

 「『ピアノの森』も描かれた一色まこと先生の『花田少年史』は、1970年代を舞台にした懐かしい雰囲気の物語。オバケが見える主人公の花田一路とその家族が、カラーテレビを買う買わないで大騒ぎする、それが楽しそうで羨ましくて! 思ったことを全部口にする家族なのも読んでいて気持ちがいい(笑)。一路とオバケとのエピソードはどれもせつなくて……。どうしても未練があって成仏できない、それほど強い想いって尊いなと思いますね」

 もう1作はラインナップで唯一連載中の『Shrink~精神科医ヨワイ~』。西山さんが「出合えてよかった」と思った作品だ。

「精神医療がテーマです。精神科医の弱井先生が患者さんの話を優しく聞いてくれるので、それだけでこちらも安心できます。印象的だったのが、震災のトラウマを抱えている方が、復興の活動を見て動悸がしてしまうというエピソード。よかれと思ってやることが、相手を傷つけてしまうこともある。なにげない言葉ひとつで傷つく人がいるかもしれないと思うと、言葉を扱う僕たちも気をつけないといけないと思わされました。

 それに僕も心が乱れることがあるかもしれない。精神医療について知っておくことで、誰かを助けられるかもしれないですよね。きっと学びがあると思います」

 子どものころ、田舎のおばあちゃんからお年玉やおこづかいをもらうと、みんなで近くの書店に行きマンガを買っていたという西山さん。大人になった今は、デジタル版をうまく活用しつつ、紙の本も大切にしているそう。

「声優は作品のオーディションをよく受けるのですが、原作がマンガであればすぐにデジタル版を買って読むようにしています。一方で紙の本も好きですね。実家に置いてある『魔法陣グルグル』や『花さか天使テンテンくん』を、甥と姪たちが読んでいるそうなんです。それをきっかけにアニメも見るようになったと聞いて、声優の叔父としてはすごく嬉しかったです」

 家族や友達とつながるツール。それが西山さんにとってのマンガなのかもしれない。

「友達と貸し借りをして、感想を言い合って。きっとそこにいろんなドラマが生まれてきたんだろうなと思います。ものが好きな僕としては、マンガの本の素材や手触りにも温かみを感じる。マンガは、これからも大事にしていきたいコミュニケーションツールですね」

CREA読者におすすめしたい2作

『花田少年史』一色まこと

事故を機にオバケが見えるようになった少年の笑いと涙の日々。「読み返したら全話で号泣しましたね。今でも胸がキュッとなる作品です」講談社 各660円 全5巻 ※電子書籍版

『Shrink~精神科医ヨワイ~』七海仁 原作/月子 作画

精神科医・弱井の治療を通して、現代日本の精神医療の現状や社会問題を浮き彫りにする。「些細なことでも誰かに相談したいと思うようになりました」集英社 660~693円 既刊8巻

表紙撮影のメイキング動画はこちら!

西山宏太朗(にしやま・こうたろう)

10月11日生まれ、神奈川県出身。2011年より声優活動をスタート。2020年、『CITY』でアーティストデビュー。主な出演作に、アニメ「キズナイーバー」、「学園ベビーシッターズ」、「ダンス・ダンス・ダンスール」など。

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2022.09.07(水)
Text=Tomoko Ohmagari
Photographs=Osamu Yokonami
Styling=Toshihiro Muratome(Yolken)
Hair & Make-up=AKi

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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