物語の舞台となった地で観るオペラ「ロミオとジュリエット」

左:ジュリエットの家のバルコニー。ロミオを思って詠うシーンが思い浮かぶ
右:家の庭にたつジュリエットの像。右胸を触ると恋が叶うというジンクスも

 そしてヴェローナの有名なもので忘れてはいけないのは、シェイクスピアの物語「ロミオとジュリエット」の舞台であること。この物語は実際にヴェローナであった話を元にしたと言われ、ジュリエットの家のモデルとなったカプレティ家の邸宅は人気の観光スポットとなっています。

古代ローマ時代に建てられた円形闘技場「アレーナ」

 「ロミオとジュリエット」のオペラが、物語の舞台となった地で、しかも前述した古代ローマ円形闘技場「アレーナ」でおこなわれるという。こんなにロマンティックなことってないと、喜び勇んで観劇にでかけました。

ヴェルディの生誕100年を記念に1913年に始められた夏の野外オペラ。今年で100年目

 チケットをにぎりしめ、アレーナに入ります。夜の帳の中に古代遺跡が美しくライトアップされ浮かび上がるとき、時間はその物語へと大きくタイムスリップします。巧妙に考えられた場面展開にどんどん物語の世界へ引き込まれていきました。そして、古代の建物ですから、現代のように効果的な音響装置をもたない屋外劇場にあって、夜の闇を貫いて響くジュリエットの美しい歌声。その声の美しさに心洗われ、目の前に繰り広げられる華麗な舞台に夢見心地。心に深く響く感動の夜でした。

 行楽と芸術と一気に楽しめたヴェローナの旅。みなさんも秋の夜長を持て余すようなことがあったら、音楽なり、物語なり、何かに心を傾けてみてはいかがですか? もしかするとその芸術が生まれた遠い地の景色が、夜の闇に浮かんで見えるかもしれません。それはまるで時間旅行にでかけたように秋の夜をいっそう楽しくさせてくれるはずです。

 アレーナでの野外オペラは例年6月下旬から9月上旬まで上演されます。詳しい情報は公式ホームページでご確認いただけます。

URL www.arena.it

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック www.facebook.com/chococogogo

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