CREA Traveller 2022 vol.2の特集は、「京都と沖縄 二つの美意識を訪ねて」。
ともに長い歴史に支えられた伝統が息づく街でありながら、全く違う表情を持つ京都と沖縄。それぞれ違う魅力を持ちながら私たちを惹きつける、そんな二つの魅惑の街に通底する美意識を探りました。
この記事の掲載号
京都に行ったらまず和食、という人は多い。けれど、フレンチもイタリアンも、京都ならではの食への哲学や文化的背景、豊かで個性的な食材を使える環境のもとで独自の進化を遂げている。世界に誇る料理を、この地で。
京都で是非訪れてもらいたい、おすすめのレストランを3回に渡りご紹介。
一杯のローズウォーターから始まる花と香りの晩餐
◆Synager(シナジェ)

店名の「シナジェ」とは、シナジー、つまり相乗効果からの造語。味、見た目はもちろん、香りを含む五感をフル活用して料理や空間をますます深く感じてほしいと北岸寿規シェフがつけた名前だ。

コースはグラス一杯のバラの芳香水から始まる。シェフ自らが蒸留器で花びらから抽出した香りの水は、気持ちを華やがせ、五感を研ぎ澄ます。

スターターのあとに登場するシグネチャーの“花のタルティーヌ”でも、素朴なライ麦パンにのったたっぷりの生ハムがたくさんの花とみずみずしいハーブに覆われていて、自然が生み出した様々な味と香りに心が緩む。

また、北岸シェフはベルクールグループでクラシックなフレンチを学び、しっかりとしたソース使いを、一方イタリアン「リストランテ ナカモト」でダイレクトに野菜の味を伝える調理法を身につけた。

だからこそ、ハーブや花、主に京都・木津川から届く野菜の力強い味や個性に存在感をもたせることができるのだろう。

居酒屋で働いた経験もあるが、多ジャンルの料理をただ混ぜるのではなく、主役となる素材を引き立てるために技法や器具を選んで使う。

そして、それが北岸シェフにとって、とても楽しそうなのも嬉しい。

Synager(シナジェ)
所在地 京都市中京区壺屋町512-2
電話番号 075-600-9182
営業時間 12:00~15:00、18:00~22:00
定休日 月曜(祝日の場合は営業)
http://synager-kyoto.jp/
※要予約

Feature
国境を越えて京都キュイジーヌ
Photographs=Atsushi Hashimoto