A子 「はぁ~......。今日はパパ活で5万引くつもりだったのに、3万円しか引き出せなかった、最悪......」

B子 「あぁ、それはやってらんないね~。そういえば、アンタが指名してるホスト、この前、黒髪の幼い感じの女の子とホテル街を歩いてたよ」

A子 「マジ? アイツ......。私の前では「量産型女子、苦手なんだよね』なんて言ってたのに......。ないわ~」

B子 「あ、あとこの前、歌舞伎のアパ前で泥酔した女が転がってたよ(笑)」

A子 「えええ~、それは危険な状況すぎない?」

  これが、歌舞伎町に生きる、いや、現代の若者たちの標準的な会話になりつつある。そもそも、ぴえんとは、何なのか――。

 

絵文字が後押しした「ぴえん顔」の定着

 まず「ぴえん」という言葉の発祥に遡る。アニメや漫画のオノマトペとして、幼い子供や若い女性が泣くときの表現として「ぴええええ」「ぴえーーーーん」などと長年にわたり使われてきた、その誕生には諸説あり、泣いている様子を表す擬態語「ひんひん」が進化したという説や、韓国語で鳴き声の擬声語である「힌(ひん)」からという説もある。昭和から平成にかけて全世代が知っている言葉だった、といえるだろう。

  そこから「ぴえん」という独立した言葉になったのは、2018年、スマートフォンの絵文字の規格であるUnicodeに「Pleading Face」なる絵文字が追加されたからにほかならない。

 下がった眉、潤んだ瞳、今にも泣きだしそうな表情をしている「Pleading Face」の直訳は「嘆願する顔」や「弁解する顔」だ。iPhone、Androidなど大半のスマートフォンにこの絵文字が適用され、若者たちに親しまれていく。

 このPleading Faceが誕生する前も、SNSでは「ぴえん」という言葉が実際に使われていた。面白いデータがある。社会と個人の関係性に着目・研究するニッセイ基礎研究所生活研究部研究員の廣瀬涼氏が、2021年2月発行の「ニッセイ基礎研REPORT(冊子版)」2月号[Vol・287]で、「「ぴえん」とは何だったのか」というタイトルのレポートを発表している。一部を抜粋する。

2022.02.02(水)
文=佐々木チワワ