現実を生きていくためのフィクションの摂取

――「漫画は子供の読むもの」と言う人もいますが、宇垣さんは漫画中心の生活をするなかで、大人こそ漫画を読むべきだと思いますか?

 大人こそと区切る必要もないと思うんですが、ひとつあるとすれば、漫画って大人にとって、とっても摂取しやすいエンタメだと思うんですよね。

 フィクションって、自分と同じような悩みを抱えている自分じゃない人が、その困難をどのように打開していくのかという過程で、ノンフィクションを見せてもらえるものだと思うんです。それによって救われたり癒されたりするので、現実を生きていくためにフィクションの摂取は必要だと思っていて。

 でも小説だと読むのが苦手だとか、アニメや映画作品も1、2時間じっと観ないといけないのがしんどい場合もあると思うんです。

 その点、漫画って絵やセリフの力があるから頭を使いすぎず、かつ自分の好きな速度で読み進めることができる。忙しくて時間がないときでもアクセスしやすい、読むことへの負荷が低い物語の出力方法だと個人的には思っています。大人にはぴったりですよね。

――そんな宇垣さんは日に3~4冊漫画を読んでいるとのことですが、ステイホーム生活も3年目に入ります。コロナ禍になって漫画を読む量はさらに増えましたか?

 元から生活のほとんどを漫画に費やしているので、実はあんまり変わらないかもしれないですね。それよりも、映画とか分厚い本とか、一気に時間をかけないと消費しきれないようなコンテンツにも時間を割くようになりました。

 あ、でも、新刊を読むペースは変わらないけど、それに加えて『金色のガッシュ!!』とか『金田一少年の事件簿』とか『日出処の天子』とか、電子書籍になった昔の名作を全巻読み返しているのでもしかしたら気づいていないだけで増えているのかも(笑)。

自分自身を守るほど、他の人から傷つけられることもなくなった

――会社員時代に執筆されたエッセイ「拝啓、貴方様」の中には、人に頼れない不器用さなど、自分の内面の苦悩についても綴られてきました。いま、漫画についてお話しされている宇垣さんは心の底から楽しそうだなという印象があります。

 こういう仕事を続けていくと、他者に分かってもらえない部分ってもちろんあるし、思ってもみない形で評価されてしまうことがあるんですけど、そういう経験を重ねれば重ねるほど、「分かってもらえなくてもしょうがないね」っていう気持ちになっていくんですよね。

 全員に理解してもらいたいという欲を放棄したことで、傷つくことが減って、今はすごくリラックスしてます。

――心の守り方が変化したんでしょうか。

 自分自身を守るほど、他の人から傷つけられることもなくなったんですよね。

――これからもこの仕事をずっと続けていけたらいいな、と思いますか?

 そうですね。こういう働き方をしていると圧倒的に時間が足りなくてつらいんです。でもそれを凌駕するくらい、いま人生が楽しいです。「なぜ寝なければならないのだ!」と思います。

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宇垣美里(うがき・みさと)

1991年4月16日生まれ。兵庫県出身。2014年4月にTBSに入社。19年3月に退社し、同年4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサーとして多方面で活躍。「週刊文春」で「宇垣総裁のマンガ党宣言!」を連載中。

今日もマンガを読んでいる


著者:宇垣美里 
発売日:2021年12月14日
定価:1,650円(税込)
文藝春秋
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2022.01.26(水)
文=CREA編集部
撮影=深野未季