21歳を演じるためにヒアルロン酸を入れたりしたけれど……

――ちなみに、『ボクたちはみんな大人になれなかった』では21歳から46歳までを演じられていますが、21歳のときに“大人”をどう見ていましたか?

 正直、10代のときには20代の人たちのことを馬鹿にしていたし、20歳の頃には30代の人たちを馬鹿にしていましたね(笑)。「25くらいになったら身体が動かなくなる」と言っている人を見て「はぁ?」と思っていました。もちろん人それぞれで、魅力的な人もたくさんいらっしゃるのですが、どう受け止めたらいいのか分からないようなことが結構あったんです。ただ、結果的にそれは自分自身の視野の狭さが原因なんだと気づきました。

 10代・20代で上世代を馬鹿にしていた瞬間もあったけど、その都度発見があったし、「これは馬鹿にすることではない」ということに気づきながらここまで来ました。それもあって、もちろん今でもその時々の自分の視点や考え方を踏まえて人と関わったり、ものを作ったりしているんですが、反面、あまり信用していないところもあって。ただ、昔の自分といまの自分を比べたら、絶対いまのほうが面白いと思えてはいますね。

 「人生50年」の時代だったら、30代の終盤くらいから自分の命の終わりを認識したでしょうし、15歳で元服して成人と認められたわけですから、その時代によって大人の定義も変わっていきますよね。いまは人生80年だから、40歳で折り返しと言われたり、定年もどんどん伸びていくことを考えると、大人というものを見失いながら死ぬまで働くのかもしれません。

 そういった中で、自分は年輪を重ねていきたいなと思っています。今回は21歳を演じるために美容液を塗ったり美容鍼を打ったりヒアルロン酸を入れたり、やれることは全部やろうと思って取り組んだのですが、本来的には全く興味がなくて。むしろ「老いる」ことをちゃんとやりたいんです。

――「老いる」のお話、気になります。

 身体的な考え方としてもあるのですが、樹木の表皮のように身体が刻んでいく“皺”って美しいと思うんです。みんなそういうものを消してツルツルを求めているけど、僕自身はそう感じています。

 最近読んだ本の中で、また改めて気付かされることがあって。“死”というものは僕らにとって終わりに感じてしまうけど、実はエネルギーを循環させるサイクルの一部でもある。老化する、朽ちる、死ぬ、腐る、発酵する――これらは全部次のエネルギーに繋がっていく。それこそ、いま盛んな「次世代エネルギー」の話ですよね。

 自分自身が老化する、死んでいくと聞くとネガティブに思えてしまうけど、考え方を転換していくと「次にバトンを渡す」という役割が見えてくる。この「バトンを渡す」も、自らの意志ではなく自然とそういうものとして存在しているという考え方で生きたらば、それはとても面白いことだと思います。

森山未來(もりやま・みらい)

1984年生まれ、兵庫県出身。1999年に舞台で本格デビューし、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)、『モテキ』(11)、『苦役列車』(12)、『怒り』(16)、『アンダードッグ』(20)など話題作に多数出演。2019年には大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺』で美濃部孝蔵役を演じた。

映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』

1995年、平凡な男、佐藤(森山未來)は文通をとおして“普通”が嫌いな女性、かおり(伊藤沙莉)と出会った。佐藤は彼女に認められたくて映像業界でがむしゃらに働くも、1999年、ノストラダムスの大予言に反して地球は滅亡せず、唯一の心の支えだった彼女はさよならも言わずに去っていった。時は経ち、2020年、46歳の佐藤はいくつかのほろ苦い再会をきっかけに、二度と戻らない“あの頃”を思い出す……。燃え殻の半自伝的恋愛小説が、ついに映画化。

2021年11月5日(金)よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほかロードショー&NETFLIX全世界配信開始

出演:森山未來 伊藤沙莉 萩原聖人 大島優子 東出昌大 SUMIRE 篠原篤
監督:森義仁
脚本:高田亮
原作:燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社文庫刊)

2021.11.04(木)
文=SYO
撮影=榎本麻美
スタイリスト=杉山まゆみ
ヘアメイク=須賀元子