うにを通して故郷・余市を盛り上げたい

 2021年、「世壱屋」は余市に、うにの加工場をオープン。さらには2022年には二つ目の加工場がやはり余市に完成する。うにを通して故郷に働く場所をつくることは、犬嶋さんが思い描いていたことだ。

「最初の加工場では、生うにの冷凍技術を開発して『熟成うに』として、ようやく商品化にたどり着いたところです。二つ目の加工場では、うにの殻割りからできるようになります。いまは漁港からうにを剥き身にして塩水につけて送ってもらっているんですけど、それだけが理由ではないのですが、仕上げの部分で最高の品質と胸を張って言える自信がまだありません。とは言え、毎日うにを食べ続けて初めてわかるくらいのちょっとした差なんです。でも、そこで妥協はしたくない。うに殻割りができるようになれば、本当の意味での『品質世界一』になると信じています。もっとクオリティを上げて、余市のうにの素晴らしさを知ってほしい。余市にうにを食べに来てほしいと思っています」

 犬嶋さんたちが開発した生うに熟成製法によって、旬に獲れたうにの風味や旨味を極限まで残して冷凍保存することが可能になったという。

 うにを毎日のように食べ続けて幾星霜。犬嶋さんが遂にたどり着いた熟成うには、本来夏とともに終わりを告げる余市のうにを年間を通しての楽しみに変えてくれた。

「毎日うにを食べている僕でも区別がつかないくらいです」

1年を通じて旬のおいしさを保つ独自の製法

 さて、迷った末に「余市産うに食べ比べ丼」を注文する。ムラサキうにとバフンうにのどちらも獲れる余市ならではの食べ比べ丼である。最初にきれいなオレンジ色のバフンうにを口にする。濃厚な甘味が広がっていく。続いてムラサキうにを頬張る。食べ比べることで二つの違いが際立つ。ムラサキうには淡白で、さっぱりとした味わい。そこで、店長の加藤さんからアドバイスをもらう。

「最初はそのまま、何もつけずに食べていただいたので、次はお醤油とわさびで、その後はうにをお醤油に溶かしてうに醤油にしても美味しいですよ。さらに、海苔で巻いて手巻きうに寿司にするのもお薦めです。うにと海苔の相性は抜群ですから。バフンウニとムラサキうにの両方で海苔巻きをつくる贅沢もありです」

 言われるがままに、うに丼をさまざまな食べ方で楽しんでいると、犬嶋さんがひと言。

「余市のうにの特徴は後味にあります」

 加藤さんも頷いている。

「ほかの道内のうにと比べると、最後の最後に磯の風味が抜けて、後味がアクセントになる。それがくせになるんです。産地で食べ比べると、違いがはっきりわかります。次はぜひ『5大産地食べ比べ丼』を食べてもらって、産地でこんなに違うんだろうってことを知ってほしいです」

 次に世壱屋に来たときは「5大うに食べ比べ丼」を食べよう。もう迷わない。

 うにを腹いっぱい食べたい。「世壱屋」は、そんな欲望を叶えてくれる。

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うに乃 世壱屋

所在地 北海道余市郡余市町大川町7-29-4
電話番号 0135-48-5652
https://yoichiya.info/

2021.09.27(月)
文=花井直治郎
撮影=石渡 朋