混迷の時代に突き刺さる映画が誕生した。佐藤 健と阿部 寛が共演した瀬々敬久監督作『護られなかった者たちへ』(2021年10月1日[金]公開)だ。

 東日本大震災から9年が経った宮城県・仙台。不可解な連続“餓死”殺人事件が発生する。捜査線上に浮上したのは、別の事件で服役し、出所したばかりの青年・利根(佐藤 健)。刑事の笘篠(阿部 寛)は、事件の捜査を行ううち、利根の衝撃的な過去を知る――。

 CREA WEBでは、本作の公開を記念し、デビューから15年を迎える佐藤 健に連続インタビューを実施。後編となる今回は、『護られなかった者たちへ』でも発揮された、佐藤の役者としての信念を語ってもらった。

 「狙いにいくと、クリエイティブが死ぬ」という言葉に込めた想いとは。進化し続けながらも、ブレることのない佐藤の創作論には、彼の生き様が詰まっている。(全2回のうち後編)

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俳優人生15年目のいま演じる“利根”という男

――佐藤さんご自身が、この物語と初めて出会った際の率直な感想を教えてください。

 最初は、原作小説(著:中山七里)ですね。まずは、純粋に面白かったです。

 作品全体に一貫するテーマである「生活保護」という制度については、僕自身、恥ずかしながら詳しく考えたことはなかったので、そこに焦点を当てた物語は非常に新鮮でした。

 世の中に問いかける意義が非常にある物語だと思いましたし、もし映像化が実現するなら自分も出演したいと思っていました。

――演じるなかで、作品の魅力をどんなところに感じましたか?

 今回の映画では原作と比べて人間ドラマが中心に描かれています。殺人事件が起き、その真相を追っていくという意味ではシリアスなシーンが続きますが、そういったシーンを描けば描くほど人間の温かみが浮き彫りになっていく。きっと、自分にとっての大切な人・護りたい人たちの顔が浮かんでくる気がします。

 生活保護という身近だけれどなかなか知らない制度、あるいは政治的な部分、そして大切な存在について、考える時間になるのではないかと思います。

2021.09.30(木)
文=SYO
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=古久保英人(OTIE)
スタイリスト=中兼英朗(S-14)