傍らにあるだけで嬉しくて、使い続けてますます愛おしくなる物がある。
日々の暮らしを豊かにする物はきっと、志ある人の手によって生み出されるのだ。
今、新たなムーブメントが起きている、岡山の新しい作り手9人に注目。今回は木を大切にし一年単位で器を仕上げる、木地師・仁城逸景さんを紹介する。
父を尊敬することも家業を継ぐことも自然の流れ
◆仁城逸景(にんじょう・いっけい)
[木地師]
父親の仁城義勝さんは、漆業界のレジェンド。その父から仕事を引き継ぐとは、どういうことなのだろう。
「工業高校を卒業して、親父に就くことにしました。我が家は職人を育てるほどの経済的余裕がなかったから、僕が作るものは下手でも、とにかく売って、材料を買う足しにしてました」と、仁城逸景さんは当時を思い出す。
仁城家の信条は、木を無駄にせず、木に無理させず。原木を購入して、製材し、それを10年自然乾燥させて、反りが収まるまで待つ。
仕事は一年単位。毎年3月までは、材を器になる前段階の大雑把な形にくり抜く作業。次はろくろで形を作る。
7月から9月は漆を塗り、漆が乾いた後、販売の期間に入る。何事も急かされる昨今、このペースを父は守り、在庫が切れれば、客を1年、待たせていた。
「父は詳しくは言わないですが、かなり確信をもってこのやり方を守っているようです」と、誇らしげに笑い、当然のようにこの手法を引き継いでいる。
※仁城さんの作品は「くらしのギャラリー」などで購入可能。
仁城逸景(にんじょう・いっけい)
1986年岡山県倉敷市生まれ。2004年、父、仁城義勝の隣で器作りを始める。岡山県・瀬戸内市にある「港の中のキッサテン」では仁城さんの器で定食が楽しめる。
くらしのギャラリー
所在地 岡山市北区問屋町11-104
電話番号 086- 250-0947
営業時間 11:00~19:00
定休日 火曜
http://okayama-mingei.com/
港の中のキッサテン
所在地 岡山市瀬戸内市牛窓町牛窓5414-7
営業時間 11:00~16:00(食事 14:30 L.O.)
定休日 火曜
https://kinoshitashouten.shop/
Feature
暮らしを潤す逸品
岡山の新しき作り手たち
Text=Akiko Hino
Photograph=Masahiro Shimazaki