傍らにあるだけで嬉しくて、使い続けてますます愛おしくなる物がある。

 日々の暮らしを豊かにする物はきっと、志ある人の手によって生み出されるのだ。

 今、新たなムーブメントが起きている、岡山の新しい作り手9人に注目。今回は、岡山県・瀬戸内市で菓子などの工房を含めて11の拠点のオーナーで、ピースフルな精神をもつ木下尚之さんを紹介する。


多店舗展開の焙煎家は常識を逆手に取る

◆木下尚之(きのした・なおゆき)
[焙煎家]

 岡山で、「洒落た店」と思うと、キノシタショウテンの系列店の確率が高い。

 オーナーは現在、菓子などの工房を含めて11の拠点をもつ木下尚之さん。多店舗展開すると味が落ちる、というのが通説だが、木下さんの考えは正反対だ。

 「仲間が増えるごとにできることが増えるんです」

 各店で作っていた菓子のクオリティを維持またはアップさせるため、菓子工房を作った。その他、それぞれの店舗で仕込みをして、協力すれば良い、というのが彼が導いた答えだ。

 ここまで充実している店だが、「いらない」ものには全く頓着しない。なんと、山の上のロースタリと港の中のキッサテンの2店舗には電話と照明がない。「いらないかな、と思って」と、木下さんは涼しい顔だ。

 今は海外のコーヒー豆農家にも会えないが、「良い状態の豆が送られてくることで、良い信頼関係ができていた、と再認識した」と満足の笑みをもらす。彼の返事はどこまでもピースフルだ。

木下尚之(きのした・なおゆき)

1980年岡山県瀬戸内市生まれ。1999年渡英。帰国後、大手ロースターに勤務。2005年京都で和食店、製パン店に勤める。2010年岡山・邑久に一号店開店。

山の上のロースタリ

所在地 岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓412-1 2F
営業時間 10:00~17:00
定休日 無休
https://kinoshitashouten.shop/

Feature

暮らしを潤す逸品
岡山の新しき作り手たち

Text=Akiko Hino
Photograph=Masahiro Shimazaki