傍らにあるだけで嬉しくて、使い続けてますます愛おしくなる物がある。
日々の暮らしを豊かにする物はきっと、志ある人の手によって生み出されるのだ。
今、新たなムーブメントが起きている、岡山の新しい作り手9人に注目。今回は岡山市撫川、瀟洒な城下町の藏で「滲み」を追い求める陶芸家・小峠貴美子さんを紹介する。
「好き」から見つけた技法は唯一無二の魅力を放つ
◆小峠貴美子(ことうげ・きみこ)
[陶芸家]
「とにかく陶芸がしたい」。その一心で小峠貴美子さんは信楽の陶芸体験に参加。そのまま窯元を紹介され、陶芸人生が始まったという。
窯業の基礎もなく、ずぶの素人ながら、土との付き合いはいきなり「仕事」から始まった。
工場で数年働いたのち、一から陶芸を学び直そうと瀬戸の訓練校に入学。
卒業後は、自由な創作活動を奨励する工房で活動を始める。岡山に戻ったのは34歳。今の作陶の場所は保存地区でもある瀟洒な城下町の蔵だ。
好きだから飛び込んだのと同じように、好きな「滲み」を追い求める。「安南(ベトナム)風」という人もいるが、ただ、この風合いが好きで、試行錯誤を繰り返して辿り着いた技法だ。
石膏型を自ら作り、そこに土を押し付けて形を作る「型打ち」の技法。赤土をベースに、白化粧を施し、絵柄は焼き上がると土に滲み、透明釉に入るヒビがさらに趣を加える。
産地の職人として10年以上働いた経験から、今は、一人で静かに創作を楽しんでいる。
※小峠さんの作品は工房隣の「ゆくり」で購入可能。
小峠貴美子(ことうげ・きみこ)
1974年岡山県岡山市生まれ。2007年まで愛知県瀬戸市内の工房勤務の傍ら制作技術を学ぶ。2008年 岡山市にて独立。常設店のゆくりは姉の店。
ゆくり
所在地 岡山市北区撫川173-1
電話番号 090-2802-9786
営業時間 11:00~17:00
定休日 不定休
http://www.yukuri-utsuwa.net/
Feature
暮らしを潤す逸品
岡山の新しき作り手たち
Text=Akiko Hino
Photograph=Masahiro Shimazaki