傍らにあるだけで嬉しくて、使い続けてますます愛おしくなる物がある。

 日々の暮らしを豊かにする物はきっと、志ある人の手によって生み出されるのだ。

 今、新たなムーブメントが起きている、岡山の新しい作り手9人に注目。今回は“人がやっていないことを成し遂げる”強い意志で作品を生み出すKITAWORKS・木多隆志さんを紹介する。


静かな佇まいのなかに意志を持つ

◆木多隆志(きた・たかし)
[KITAWORKS]

 パリの街角にいるような雰囲気を醸し出す木多隆志さん。ショールームは都会の洗練されたサロンのようだ。

 しかしその壁の向こうには幾つもの大型機械が並び、ハードな工具を使いながら、精度と専門技術を要する作業が行われている。

 21歳のとき、父の鉄工場で働きだす。一通り機械の使い方を習得したのち、デザインや木に興味を持ち始めた。鉄やステンレスを扱えることに木が加わり、彼の世界は大きく広がることになる。

 最近は、真鍮が面白いらしい。家具には使いづらい、と思われている素材だが、構造を工夫することで、精度を高められたことに手応えを感じている。

 現在、世代交代し、KITAWORKSと名前を変えた工場には、一代では揃え切れないほどの機械類がある。

 “人がやっていないことを成し遂げる”強い意志を持つ木多さんの次の動きが楽しみだ。

木多隆志(きた・たかし)

1978年岡山県津山市生まれ。地元の工業高校後、ヒッピーに憧れ、山暮らしを始めるが、21歳で帰京。32歳KITAWORKSを立ち上げる。

KITAWORKS

所在地 岡山県津山市高野本郷1273-1
電話番号 090-3375-7165
https://www.kita-works.com/
※ショールームは予約制。前日までにメールか、当日の場合は電話で連絡を。

Feature

暮らしを潤す逸品
岡山の新しき作り手たち

Text=Akiko Hino
Photograph=Masahiro Shimazaki