傍らにあるだけで嬉しくて、使い続けてますます愛おしくなる物がある。

 日々の暮らしを豊かにする物はきっと、志ある人の手によって生み出されるのだ。

 今、新たなムーブメントが起きている、岡山の新しい作り手9人に注目。今回は独自の青色が魅力のガラス工房「HIROY GLASS STUDIO SEIDEN Gallery」を紹介する。


米作りと地元と父親に敬意を表したグラス

◆花岡 央(はなおか・ひろい)
[HIROY GLASS STUDIO SEIDEN Gallery]

 美術教師の父の影響からか、花岡央さんは倉敷の芸術大学を目指した。

 当初は備前焼を志望していたが、成形から焼き上がりまで時間のかかる陶芸と違い、ガラスは「吹いた翌日にはモノに触れられる」ことに感激し、専攻をガラスに変更。

 卒業後はガラス業界で誰もが一目置く、辻野剛氏のアトリエに入り、チーフを任されるまでの腕になる。実際、ガラスを吹く彼の動きは、まるで灼熱のガラスを直に触っているかのように自由だ。

 9年でアトリエを辞し、実家の備前に工房を建てた。そこで取り組んだのは米の籾殻の灰を使って独自の青を作ること。

 幾度も失敗しながら淡青のグラス「GRICE(グライス)」を誕生させたのは定年退職後、米作りに苦心し続けた父を労う気持ちからだ。ギャラリー名の「SEIDEN」も工房周辺地域の田んぼの古の租税制度「井田」に由来する。

 「食卓はガラスだけでは成り立たない」という彼は備前の地で、異素材と組み合わせで引き立つ器を、と今日も窯に向かう。

花岡 央(はなおか・ひろい)

1982年岡山県備前市生まれ。2000年倉敷芸術科学大学にて小谷眞三氏に師事。2004年大阪・frescoにて辻野剛氏に師事。2013年帰郷し、工房を設立。

HIROY GLASS STUDIO SEIDEN Gallery

所在地 岡山県備前市穂浪583-1
電話番号 090-7591-0428
営業時間 10:00~18:00(要予約)
定休日 月曜、ほか不定休
http://www.hiroyglass.com/

Feature

暮らしを潤す逸品
岡山の新しき作り手たち

Text=Akiko Hino
Photograph=Masahiro Shimazaki