「私なんて」と思ったら観て欲しい“思い当たる節”ありすぎアニメ

■「HUGっと!プリキュア」

 このアニメを紹介したいと思うんですが、「おや? 向井どうした?」と思う方もいるかも知れません。確かに数年前まで僕も「プリキュアって何となく聞いたことはあるけど、まぁ小さい女の子が観るアニメだよね」と、何の疑いもなく思っていました。

 しかし、ある時、ネットニュースを見ていたら「初の男の子プリキュア誕生」という見出しの記事が目に留まりました。「それがニュースになるってどう言うこと?」とそのニュースをよく読んでみると、それは「ジェンダーの平等」を描いていて、大きな反響を呼んでいるということでした。

 「え? そんな大事な問題を小さい子向けのアニメで扱ってるの?」と驚きました。興味を持ち、初代プロデューサーの方のインタビュー記事を読んでみたら「プリキュアのテーマは『女の子だって暴れたい』。男女の差なんてない」と書いてありました。

 「一体どんなアニメなんだ」と思い、観てみたのがその時やっていたシリーズの「HUGっと!プリキュア」です。

 まず観てビックリしたのが敵との戦闘シーンです。僕のイメージでは、プリキュアが魔法みたいなのを使って敵を倒すのかなと思っていたんですが、実際はかなりの肉弾戦でした。プリキュアが巨大な鉄骨で敵をぶん殴っていました。ほぼアウトレイジでした。やはりそこにも男性ヒーローだろうが女性ヒーローだろうがどう戦ってもいいというメッセージが込められているそうです。

 こんな多様性を大事にするアニメを観ていたら、「大人の男だってプリキュア観たい!」という気持ちが抑えきれなくなり、気付いたらAmazonでDVDを注文していました。

 そして「HUGっと!プリキュア」を改めて1話から見始めることになるんですが、まさか35歳の男が主人公の野乃はなという中学2年生の女の子に感情移入して泣くとは思ってもいませんでした。

 野乃はなという女の子は特別、勉強が得意な訳でも、運動が得意な訳でもない、ドジな部分もある、少しスペックが低いとされる女の子です。そんな子がひょんなことから「キュアエール」という名前のプリキュアになり、仲間と3人で敵と戦うことになるんですが、この一緒に戦う仲間が、1人は優等生で容姿端麗な女の子、もう1人は元フィギュアスケートのスター選手で運動神経抜群な女の子と、2人ともそれぞれに辛い過去や悩みはあるものの、俗にいうスペックの高い子達なんです。

 はなは他の2人を見ているうちに、「自分には何もない」と思い始め、自信をなくし、プリキュアに変身することができなくなってしまいます。そしてプリキュアを辞めると言い出すのです。

 もう分かりますよね? 思い当たる節チャンスがやってきました。

 周りと自分を比べた結果、自信をなくしてしまって落ち込んでしまうことなんて誰にでもあると思います。僕も元々ボケをやりたくて吉本に入ったんですが、同期の「チョコプラ」や「シソンヌ」のスペックの高さに自信をなくし、「こりゃ無理かもな」と思いました。

 しかし、一時は完全に自信を失った野乃はなですが、周りの人達の言葉によって自分が持っているものに気付きます。それは、人を素直に応援し、元気にできるということです。それに気付いた時、本当の「キュアエール」としてもう一度プリキュアに変身することができるのです。

 この瞬間、号泣でした。僕もボケを諦めた後に、ボケでは戦えなくても、面白い人達をより面白く見せるお手伝いができるかも知れないとツッコミになった経緯があるからです。

 みなさんも「HUGっと!プリキュア」を観て、今後、自分に何もないと思ってしまったら、どうか「キュアエール」と「キュアツッコミ」を思い出して欲しいです。

「HUGっと!プリキュア」

2018年2月~2019年1月にテレビ朝日系列で放送されたアニメ。
原作:東堂いづみ
脚本:村山功、広田光毅、井上亜樹子、有賀ひかる、田中仁、成田良美、横手美智子
声の出演:引坂理絵、本泉莉奈、小倉唯、多田このみ、野田順子ほか
アニメーション製作:東映アニメーション
マーベラスよりBlu-ray、DVDが発売中。

向井 慧(むかい・さとし)

1985年、愛知県出身。2008年、尾形貴弘、菅良太郎とパンサーを結成し、ツッコミを担当。「デカ盛りハンター」(テレビ東京)などレギュラーのほか、「有吉の壁」(日本テレビ)には全回出演。同番組の公式動画「〇〇のバス」ではMCを務め、2020年にはポイント獲得ランキングでも1位となった。ラジオでは、毎週2時間半に渡り1人で喋る「#むかいの喋り方」(CBCラジオ)や、「又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間」(NHKラジオ第1放送)などレギュラー4本を抱える。

2021.02.16(火)
文=向井 慧