庭とアートは相性がいい。それはそうだどちらも目で観て、五官で味わうことで人の感情を自在に操るものなのだから。
アーティストと自然が伸び伸びとコラボレーションし、また美術館と庭が見事に融合した贅沢な場所を見てみよう。
咲き誇るクレマチスとイタリア彫刻が溶け合う
◆ヴァンジ彫刻庭園美術館
眼下に駿河湾を望み、返り見すれば富士山の巨大なシルエットが目に飛び込んでくる──。
そんな豊かな環境を有するのが静岡県長泉町。人口4万人ほどの山間地だが、実は国内需要の6割を占める特産品がある。
色とりどりの花を咲かせるクレマチスの日本原種が育つ地であり、苗の生産量が全国一なのだ。
町の象徴たるクレマチス、それにバラなどを中心とした広大な庭をつくり、その中に位置するのが「クレマチスの丘 ヴァンジ彫刻庭園美術館」。
イタリアの現代彫刻界を代表するジュリアーノ・ヴァンジの個人美術館であり、展示棟内のみならず庭園のそこかしこにヴァンジ作品が配されている。
Text=Hiroyasu Yamauchi
Photographs=Takashi Shimizu