開拓の時代より大いなる自然に立ち向かってきた北海道の人々が人の手による「庭」を創る時、それは伸び伸びとおおらかで、土地の歴史やそれ以前からその地に息づく生命の連続を今に紡いでいるかのようだ。

 北の大地に抱かれる北海道の庭は、みなぎる生命の歓びに溢れている。おすすめの庭園や美術館などの施設を8つご紹介。


今日も人々が集う大地の彫刻はイサム・ノグチの壮大な遺作

◆モエレ沼公園

緩やかな斜面の反対側に石段の斜面を持つプレイマウンテン。

「人間が傷つけた土地をアートで再生する」

 1988年、初めて札幌を訪れた彫刻家、イサム・ノグチは、自身の作品候補地の中で、当時はゴミの舞い散る埋め立て作業中のモエレ沼公園予定地に立ち、埋め立て後に緑化予定の公園計画への参加を決めた。

地域固有の自然エネルギーである雪を活用した冷房システムを導入するガラスのピラミッド。公園を取り囲むモエレ沼からの遠景。

 枠にはまらず、家具や照明、空間をも数多く形作った世界的彫刻家が生涯最後に取り組んだ壮大な庭――公園の創成がスタートした瞬間だった。

ステージと半球形の建物のミュージックシェル。
空と大地を繋ぐモニュメント、テトラマウンド。

 緑に覆われた標高60メートル以上の「モエレ山」や子どもが駆け登る「プレイマウンテン」、水の彫刻を思わせるイサムの原案に沿い実現した「海の噴水」、木立の中に次々と幾何学的でカラフルな遊具が現れる「サクラの森」ほか、広大な大地に施されたデザインは大胆にして緻密。

公園のシンボル建造物、ガラスのピラミッド〈HIDAMARI〉の内部より公園を望む。館内にはイサム・ノグチを紹介する展示ギャラリーやレストラン、ショップなどを内包。

 この視覚的に美しく、どこに身を置いても楽しいモエレ沼公園が完成したのは、マスタープランと模型を残しイサムが急逝した年の暮から17年、2005年のこと。

遊び場が点在するサクラの森の中に斬新な色や形のイサムデザインの遊具が現れる。

 以来、遺作となった大地の彫刻――モエレ沼公園を訪れる人は後を絶たない。年齢を問わずそれぞれが憩いの場を見つけられる公園として、世界中から人々が集う。

頂上から3方向に滑り降りることができる滑り台、スライドマウンテン。

安田 侃(やすだ かん)彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄(びばい)

所在地 北海道札幌市東区モエレ沼公園1-1
電話番号 011-790-1231
開園時間 7:00~22:00
料金 無料
休園日 無休(園内各施設は休みあり)
https://moerenumapark.jp/

Feature

大地の鼓動に抱かれる
北海道ガーデン紀行へ

Text=Chiyo Sagae
Photographs=Asami Enomoto

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