篤い友情と信頼のもとに築かれた 世界有数のコレクション

 第二次世界大戦中も幸運なことに戦火を逃れた大原美術館は、戦後、その運営を孫三郎の息子、總一郎が担うこととなる。

 児島の思いを受け継ぎ、西洋近代絵画のみならず日本近代絵画や民藝運動、そして現代美術を収集・紹介した總一郎、そして彼らの思いを受け継いだ人々によって、大原美術館の歴史は今日まで続いてきたのだ。

 児島がヨーロッパで作品収集を開始したのは、スペイン風邪がようやく収束した1920年のことだったという。奇しくも100年後の今年、世界を新たなウイルスが襲い、美術鑑賞などもオンライン化が進んだ。

「実物を精巧に複製でき、実物に向かい合うことなく実物の詳細な情報が手に入る現代において、実物の意義とは何かと考えると、究極をいえばそれは、『“実物”という物語』ではないだろうかと思います。

 そして、人間はなぜか物語を必要とする生き物です。大原美術館の作品は、語りきれないほどの物語を帯びています。その物語を帯びた“実物”をぜひ、体感していただければと願っています」(吉川さん)

……君の志を遂げさせることのできなくなった今日、せめて君を永久に記念するために、その生涯を語る作品と、君が斯道に寄与せんことを希って蒐集したものとを陳列公開することは、私に与えられた義務であるように感じて、ついにこの館を造りました。

将来この美術館が少しでも世に貢献する所があれば、児島君も地下で満足する所であり、私の微意もその目的を達する次第でございます。

大原孫三郎(美術館設立趣意書より)

大原美術館

所在地 岡山県倉敷市中央1-1-15
電話番号 086-422-0005
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
料金 1,500円
休館日 月曜(祝日、振替休日の場合は翌日)、12月28日~31日
https://www.ohara.or.jp/
※2020年8月25日から再開館を予定。当面の間は分館は休館とし、本館及び工芸・東洋館で作品を展示します。状況により変更の可能性があるので、HPでご確認ください

Feature

Text=Yuko Harigae(Giraffe)
Photographs=Asami Enomoto
Cooperation=0hara Museum of Art