話題の展覧会は、常に盛況。喜ばしいことだけれど、みな美術館で何を得て帰っていくのだろう。ふとそんな疑問に囚われ、自らにも問い直してみた。

 かつてのパンデミックの後にはルネサンスがやってきた。今こそ見直したい、単なる美術館巡りを本当の心の旅にする術を。


音楽では涙が出ても 絵画では泣けない?

 緊急事態宣言が解除になったその開放感を味わいたくて、まずは美術館に出かけようという人は多いはずである。不要不急の象徴にもされた文化芸術への恋しさもあって。

 でもだから今こそ、自分自身にも問い直しておきたいと思ったのが、人はなぜ美術館に行くのだろうということ。美術館に行って、人は一体何を得て帰るのだろうかということ。

 もちろんそんなものは100%個人の自由。そこに足を運び、名画の前に身を置くだけでも価値がある。しかし近年、話題の展覧会には大挙して人が訪れ、メインの展示作品は近づけないほどの密状態になる。

 今後それはあり得なくても、行くだけで満足し、何も感じずに帰る人がいたり、写真撮影OKの海外の美術館ではスタンプラリーのように、作品を眺めることなく写真を撮り続ける人もいる。

 何かそれではあまりにもったいない。かつてペストの後にルネサンスが訪れたように、今まさに、本質を見つめ直す時なのだ。

 化粧品のラ・プレリーがアートで商品自体を表現する新しい試みで、今一層ブランド価値を高めている。まるで美術品のようなルブタンの化粧品も一線を画す存在。

 文化のある化粧品との出会いに重要な意味を見いだす人が増えているような時代なのに、歩くだけの美術館巡りではもったいない。

 じゃあどうすれば?

 「人は私の作品について議論し、まるで理解する必要があるかのように理解したふりをする。私の作品はただ愛するだけでよいのに」とモネは言ったが、また簡単にはたどり着けない“愛する”という境地。

 音楽を聴いて涙しても、絵画に対して人はもう少し冷静だ。音楽は受け身で感動できるが、絵画はむしろ能動的に自分の中で感動を築き上げていくものなのだろう。

 画家その人を知り、描かれた背景を知り、想像力を研ぎすませた時、体内で感受性が震える瞬間があるはずで、たった1作品でいい。

 心が高鳴る1枚が人を高みにあげるのだ。だから展覧会ですべきは、その1枚と出会うこと。

 出会えなくても夢中で探し回る事が、一つの醍醐味であるのは確かなのだ。

クリスチャン ルブタン ビューティ

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Text=Kaoru Saito