よく寝て体を動かす。脳を活性化して輝く女性に

 仕事で失敗したときや人間関係で落ち込んだとき、“ああすればよかった”とくよくよ悩んで寝不足に。これも脳にとってはNG行動。くよくよしそうになったときは、「とにかく寝る!」と黒川さん。

 「午前0時前後に視覚刺激を断ってしっかり寝ると、眠っている間に脳が情報を整理してくれるので、大事なものとそうでないものの区別がついて迷いが消えます。また、この時間の眠りは生殖ホルモンや新陳代謝ホルモンの分泌にも関わってくるため、アンチエイジングにも繫がります」。

 とはいえ落ち込みが激しいと、なかなか眠りにつけないもの。「そんなときは、泣くか笑って!」。ドラマや映画を観るでもよし、強制的にでも泣き・笑うと、脳に変化が生じるそう。

「泣くと神経ストレスを和らげる脳内ホルモンが誘発され、笑うとうれしいとき脳に起こる神経信号が誘発されます。だから泣くとイライラが解消されたり、笑うと好奇心が蘇ったり前向きになれたりもする。昔から“苦しくても笑えば乗り越えられる”と言われてきたのは、この経験値があったから」

 さらに落ち込みから脱却する劇的な方法が。それは「身体を動かす」こと。

「少し汗ばむくらいの有酸素運動を生活に取り入れて。身体イメージを描き、基礎練習をし、人やボールの反応でその成果が確かめられる運動が理想的」

 例えば、武道、テニス、ダンスなど。とりわけ社交ダンスのようなペアで踊るダンスは認知症の発症を抑制する効果が高いというデータがあり、黒川さん自身40年以上続けているのだとか。

 また脳を活性化させるには、栄養補給も重要なポイント。脳のために積極的に摂取したい栄養素があるという。

 「動物性たんぱく質、鉄分、ビタミンB群、A、E、EPAは脳を動かす基本。肉・魚・卵・乳製品を積極的に食べましょう。なかでも卵は脳にとって良い栄養素をまんべんなく含む完全食。嫌われ者のコレステロールだけれど、実は脳の立役者で、脳みその30%はコレステロールでできているほど。脳のためにも一日3個ほどお食べください」

 黒川さんが推奨する脳のための習慣はシンプルで、気負わずできるのもいいところ。職場や家庭、人間関係などで、日々ストレスに晒されている人こそ、取り組んでほしいと話す。

 「20代は強い生殖本能で迷いなく動けますが、30代は経験で動く年齢に入ります。しかし、脳はまだ“いろいろ見えるけど、何が本質かわからない”状態。迷いながら、センスや勘を磨く時期でもある。30~40代の泥沼感は当たり前だし、人生で一番苦しいとき。迷っていること自体に悩まずに、果敢に進むこと。人生は痛い思いをしただけのことが必ずある。それを乗り越えてこそ、輝かしい大人の女性になるのだと思います」

黒川伊保子(くろかわ いほこ)さん

脳科学者・AI研究者。感性リサーチ代表取締役。語感分析法を開発し、年間100回を超える講演・セミナーを行う。『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す! 人生を変える7日間プログラム』(集英社)など著書多数。

2020.04.05(日)
Text=Etsuko Onodera

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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