かくして王家の歴史は永遠に……

新たな異国の王がやってきた

 スペイン継承戦争を制したのはルイ太陽王だった。さっそく彼の孫がフェリペ5世と称して乗り込み、宮廷をフランス風に変えたが、ヴェルサイユ恋しさに心を病む。その2代あとのカルロス3世は、どうにかスペインの国力を立て直し、マドリードの都市整備の一環としてプラド(「牧場」の意)も建設した。美術より自然科学に関心が高かったので、博物館にするつもりだった(プラド美術館になったのは孫の代)。

『カルロス4世の家族』(1800~1801年) フランシスコ・デ・ゴヤ
本作を見たゴーチェは、「富籤にあたったパン屋の一家みたいだ」と嘲った。然り。王侯の威厳、今いずこ。特にマリア・ルイサは「スペイン史上最悪の王妃」とあだ名され、同時代のマリー・アントワネットと不人気ぶりを競った。
copyright :Museo Nacional del Prado

 このカルロス3世から、「なんておまえは馬鹿なんだ」と叱られ続けたのが、「パン屋」にしか見えないカルロス4世。父王の嘆きももっともで、4世は無芸大食、妃マリア・ルイサの年下の愛人ゴドイに政治の舵取りを丸投げした。フランス革命の時代だ。そんなことで無事でいられるわけもなく、結局、亡命の憂き目とあいなった(ギロチンを免れただけマシかもしれないが)。

 続いて土足で踏み込んできたのがナポレオンだ。てんやわんやの末、このコルシカの怪物が失脚すると、王政復古して4世の息子が玉座につく。現王室は従ってブルボンの血を引いている。

『マドリード、1808年5月3日:プリンシペ・ピオの丘での銃殺』(1814年) フランシスコ・デ・ゴヤ
戦争画の傑作。王家の亡命後、ナポレオン軍にスペインは蹂躙された。無実を示す白シャツの主人公の掌には、イエスを思い起こさせる聖痕が描かれている。ロボットのごとき処刑者たちvsそれぞれ個性的な犠牲者たち。
copyright :Museo Nacional del Prado

Museo Nacional del Prado (プラド美術館)
住所 Paseo del Prado s/n, Madrid
電話番号 +34-902-107-077
URL www.museodelprado.es
開館時間 10:00~20:00 (日・祝~19:00)
定休日 1月1日、5月1日、12月25日
拝観料 12ユーロ、ガイドブック付き22ユーロ
王家が長い歴史のなかで収集してきた膨大な美術品を中心として1819年に創設。現在の所蔵品数は、3万点をゆうに超えるといわれ、その多くが珠玉のスペイン絵画。ベラスケス、ゴヤ、ムリーリョら、偉大な画家たちによって描かれてきたのは、まさにこの国が紡いできた歴史そのもの。世界屈指の名画コレクションを間近で鑑賞する贅沢、存分に堪能したい。

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photo:Atsushi Hashimoto
realization & text:Shojito Yano
coordination:Yasuo Taniguchi / Yukiko Hori
illustration:Kanako Sasaki / Masako Kubo