1mのズッキーニから豚の解体まで!? 食材の迷宮へ……

左:オリーブの最盛期には、生も店頭に。各家庭で塩漬けやオイル漬けにします
右:「チェンティナイア」と呼ばれるズッキーニの一種。奥の長細いのもズッキーニ

 威勢のいいシチリア弁が飛び交う活気に溢れる路地市場を歩けば、色とりどりの野菜や果物、地中海から上がったばかりの魚介類のまにまに、見たこともない食材に出会います。1メートルもある細長いズッキーニ、赤ちゃんの頭ほど大きい丸いナス、巨大なレモンのようなチェードロ……。市場では、食文化の違いを如実に感じるものですが、ここはまさに異国のカオス。真っ二つに切った仔ヤギやウサギが内臓もあらわに並ぶ肉屋さんの奥で、吊るした牛をさばいていたり、大きな包丁で骨まで叩き切る様子には、少々度肝を抜かれますが、塊から切ってもらうお肉は、いかにも美味しそう!

左:魚屋さんが威勢がいいのは万国共通。活きのいい魚介が飛ぶように売れる
右:肉屋さんの奥では豚を解体中。耳も皮もすべて店頭に並びます

 魚屋さんの店先には、豪快にぶつ切りにされたカジキマグロや銀色に光るシイラ。澄んだ瞳のサバやアジ、プリプリのタイなど、地中海直送ながら日本人にもお馴染みの魚も見つかって、ちょっとホッとしつつも、再び八百屋さんをのぞけば、まぶしいほどに赤いトマトに衝撃を受ける。野菜や果物のあまりの育ちっぷりに、地中海の太陽の力強さを感じずにはいられません。

市場には生鮮食品のほかに加工食品も多々。こちらはチーズ専門店

 山積みのオリーブ、リコッタ・アル・フォルノ(焼きリコッタ)、ぎっしりと瓶詰にされたアンチョビ、塩漬けカッペリ、カタツムリ、そしてピンクの柔肌を見せるマグロのボッタルガ(カラスミ)。歩いても歩いても食材だらけ。

 パレルモの長い歴史の中には、9世紀~11世紀までアラブ人の支配下に置かれていた時代もあり、バッラロは、商売上手なアラブ人が始めた市場。10世紀に記されたアラブ人旅行家の日記にも登場します。

豆類やスパイスも豊富。ひよこ豆、レンズ豆のなかに小豆も発見!

 かといって、市場内に何かゆかりのあるものが残されているかというと、「そんなものはない!」のが、気候も人柄もゆるくて適当なシチリアらしいところですが、パレルモの長い歴史は、多種多様な食材を使う豊かな食文化となって、今もしっかり人々の暮らしの中に息づいています。パレルモ最古の市場、バッラロを歩けば、複雑で長いパレルモの歴史の一端を垣間見ることができるのです。

岩田デノーラ砂和子
フリーライター・コーディネーター・イタリア語通訳。2001年より、イタリア在住。メディアコーディネートおよび女性誌、WEBに執筆するほか、イタリア関連書籍多数。近著は人気シリーズ第3弾「街歩きのイタリア語」。
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