北欧の女性作家の生涯を追体験する
「カーアン・ブリクセン博物館」

　都市部においても森や海が人々の身近にあるデンマーク。多くの美術館が自然を取り入れた環境をテーマにしている。元富裕層の邸宅、王室の離宮、著名女性作家の生家など、異なる年代の建物や庭でアートを身近に感じたい。

書斎やリビングなど
往時を忠実に再現

●カーアン・ブリクセン博物館

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　アフリカを舞台にした自伝的小説で映画の原作ともなった『アフリカの日々』や『バベットの晩餐会』の作者、カーアン・ブリクセン。

　デンマークの国民的作家である彼女が1931年にアフリカから戻り、亡くなるまで住んだ自宅が博物館として公開されている。

　場所はコペンハーゲンから郊外電車で30分ほどのルングステッド。森と海が共存する風光明媚な街だ。

　夏の間の執筆室となった海に面した書斎、花を絶やさなかったリビングやダイニング、キッチンなどが再現されている。

　裕福だった幼少時代、結婚後はアフリカに渡ってコーヒー農園の経営に携わるが失敗し、離婚。さらには恋人の死も経験し、失意の末に故郷に戻り、執筆活動を開始。

　ブリクセンの数奇な運命を辿ることができる。

　広大な敷地は野鳥保護区域に指定されており、珍しい種類の野鳥が見られる。

　鳥の声を聞きながら、ブナの木の下のブリクセンの墓碑に足を運ぶのも悪くない。

Text＝Chieko Tomita
Photo＝Atsushi Hashimoto