ちょっとお下劣な笑いに溢れた作品も

 一方、神様から鈴のような音で屁を放つ奇芸を授かってお金持ちになる男と、その男を真似て茶番で終わってしまった男を描く、ちょっとお下劣な笑いに溢れた《福富草紙》のような作品もある。そして経済的な発展によって庶民の間でも「もの」──さまざまな道具が豊かに出回るようになった時代を象徴するような、煤払いで廃棄されてしまった「もの」が人間に復讐を企てる《付喪神絵巻》は、まるで水木しげるのマンガを見るようだ。

付喪神絵巻(上巻 部分)、二巻、16世紀、岐阜市・崇福寺蔵
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 こうした妖怪たちを主人公にした絵巻物の最古にして最高の作品も、今回出展されている。それが鬼たちが深夜の町を列をなして行進するさまを描いた《百鬼夜行絵巻》(真珠庵本・重要文化財)だ。他の絵巻類と異なり、登場する妖怪たちやその振る舞いを説明する文章は一切入っていない。彼らの奔放で生き生きとした様子から、観る者が自由に新しい物語を紡ぎ出せばいいのだ。

藤袋草子絵巻(部分)、一巻、16世紀、サントリー美術館蔵
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2012.10.13(土)