カジノも食文化の多様化に貢献

 目下、マカオは世界最大のカジノ売上を誇る都市として知られ、市内にはおよそ40のカジノ施設が立ち並びます。マカオがカジノ都市として発展する転機となったのが2002年のカジノ経営ライセンスの対外開放です。これによって、米国や香港といった海外資本が新規参入し、大型カジノIR(統合型リゾート)のオープンラッシュが始まりました。

 IR運営会社は、集客のための核テナントとして高級レストランの誘致を進め、世界各地で豊富な経験を持つシェフが次々と招聘されたことも相まって、広東料理、フレンチ、イタリアン、日本料理といった分野で世界最高水準の料理を味わえるようになりました。

ミシュランガイド(香港・マカオ版)は2018年版で創刊10周年を迎えた。

 世界的に知られるグルメガイド「ミシュラン」も2008年に香港・マカオ版を創刊。2017年11月30日に発売された最新版では、マカオの18軒のレストランが星を獲得し、このうち17軒がIR内に店舗を構えています。

ミシュランガイドの最新版で星を獲得したマカオのレストランは、大型IR内が中心。
今回1ツ星を獲得したイタリアンの名店「オット・エ・メッツォ・ボンバーナ」も大型IRギャラクシーマカオ内にある。

B級グルメやスイーツも存在感

 マカオ料理や高級レストランだけではなく、例えばポークチョップバーガーやカレーおでんといった庶民的なB級グルメでも名物が存在します。

 ポークチョップバーガーは1970年代にタイパ島の有名観光地タイパビレッジにある「大利來記」が売り出したのが始まりで、1990年代から香港旅客を中心に口コミで広がり大ブームに。現在まで行列ができる人気店として絶大な支持を集めています。

ポークチョップバーガーブームの火付け役となった「大利來記」の本店。

 また、おでんはマカオでもテイクアウトフードの定番。近年、トッピングにカレーソースを選択できるのがマカオ風の味わい方として人気を集めています。

 いつの頃からか世界遺産・盧家屋敷のあるマカオ半島旧市街地の大堂巷という細い路地にカレーおでんを扱う店舗が並ぶようになり、観光ガイドブックに「おでんストリート」として紹介される機会も増えたことから、多くの観光客で賑わっています。

カレーおでんを求める行列。
カレーおでん。

 マカオの名物スイーツといえば、エッグタルトが最も有名です。発祥の店として知られる「ロード・ストウズ・ベーカリー」は近年支店が続々オープンするなど、勢いが止まりません。こちらの詳細は過去記事「マカオの名物エッグタルトが身近に! 」でご紹介しています。

ロード・ストウズ・ベーカリーのエッグタルト。

 中華風スイーツではマカオ発祥の牛乳プリンが挙げられます。マカオ市内だけでなく香港にも複数の支店を展開する「義順」が有名で、観光客だけでなく、地元の女性にも支持されています。温かいものと冷たいものがあり、地元の女性の間ではお腹を冷やさないことが健康の秘訣とされているため、「温」が圧倒的に主流といいます。生姜風味や小豆のトッピングも人気です。

牛乳プリンの有名店「義順」。
牛乳プリン。

 食文化創造都市に登録されたことで、今後、マカオがグルメ分野でも世界からいっそう注目されると予想されます。カジノや世界遺産と合わせて、多様な食文化も楽しめる都市であることを知っていただく機会になれば嬉しく思います。

 マカオの街には、上記に挙げた以外にも多くの魅力的な食があちこちに存在します。どうぞマカオ食い倒れの旅をお楽しみください!

勝部悠人(かつべ ゆうじん)
大学時代にポルトガル語を専攻。大学卒業後、日本の出版社に入社し、旅行・レジャー分野を中心にムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ、現地最新トピックを日本市場に向け毎日発信している。
マカオ新聞 http://www.macaushimbun.com/

Column

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文・撮影=勝部悠人(マカオ新聞)