異教徒も寛容に受け入れる
聖なる山の奇蹟の水をお土産に!
洞窟教会の天井に張り巡らされたいくつもの樋。幾何学模様を描く不思議な樋は、岩のあちこちから滲み出る水を集めるためのもので、ゲーテの日記にも、「透明な水を湛えた水槽にはいる。信者たちはその水を汲んでいろいろな病気除けに用いるのだ」とあるように、遺骨が発掘された時分から、病気や怪我が治ると信じられてきました。
現在、水槽に集められた岩清水は、地下水路で教会入り口のホールの噴水につながっており、人感センサーで一定時間、自動で水が出るようになっています。
メカニカルですが、霊験あらたかなのは変わりないようで、噴水の周囲には「おかげさまで怪我が早く治りました」や「病気が治癒しました」などのメッセージとともに、お礼の供物がたくさん積み上げられています。
1787年にゲーテも歩いた「信仰の厚い人たちが熱心にこの山に参詣するので莫大な費用を投じて作られた道路」は、約200年経った今も旧道として残り、標高429メートルにある教会まで徒歩で登ることができます。信者のみならず、週末にはトレッキングを楽しむ人や、なんとロードレーサーの姿も。
日本人旅行者にはまだあまり知られていませんが、ゲーテをはじめ、バイロンやワーグナーも惹かれ訪れた聖なる山とサンタ・ロザリア洞窟教会。
先日、パレルモで行われた世界ドキュメンタリー映画フェスティバルに招待された映画「ペレグリーノ」も話題で、この映画によれば、パレルモに暮らすイスラム教徒やヒンズー教徒にとっても聖なる山であり、教会に参詣する異宗教の方々もいるのだそう。
長い歴史の中で異国の文化を受け入れ、許容してきた街・パレルモらしさの象徴でもある自由な聖地。訪れると、なんとな~く懐広く受け入れられる感じ……を受けなくもないような……。やはり「何か」あるのかもしれませんね! パレルモを訪れる機会があれば、ぜひ登ってみては?
岩田デノーラ砂和子
2001年よりイタリア在住のライター/コーディネーター/通訳。現在はシチリア州パレルモ在住。イタリア専門コーディネートチーム「Buonprogetto.com」を主宰するほか、個人旅行者向けイタリア旅行サイト「La Vacanza Italiana」を運営。イケメン犬ボン先輩とヤラカシ系イタリア人の夫との日々を綴るBLOG「ボン先輩は今日もご機嫌」が、ただ今人気急上昇中!
文・撮影=岩田デノーラ砂和子