異教徒も寛容に受け入れる
聖なる山の奇蹟の水をお土産に!

聖水お持ち帰り用に、サンタ・ロザリア像を模したペットボトルやガラス小瓶も売られている。

 洞窟教会の天井に張り巡らされたいくつもの樋。幾何学模様を描く不思議な樋は、岩のあちこちから滲み出る水を集めるためのもので、ゲーテの日記にも、「透明な水を湛えた水槽にはいる。信者たちはその水を汲んでいろいろな病気除けに用いるのだ」とあるように、遺骨が発掘された時分から、病気や怪我が治ると信じられてきました。

 現在、水槽に集められた岩清水は、地下水路で教会入り口のホールの噴水につながっており、人感センサーで一定時間、自動で水が出るようになっています。

 メカニカルですが、霊験あらたかなのは変わりないようで、噴水の周囲には「おかげさまで怪我が早く治りました」や「病気が治癒しました」などのメッセージとともに、お礼の供物がたくさん積み上げられています。

石畳の旧道を歩いて教会まで登る信者も多い。熱心な信者は、裸足の場合も! 9月4日のサンタ・ロザリアの命日には、ろうそくを片手に行列する幻想的な風景も見られる。

 1787年にゲーテも歩いた「信仰の厚い人たちが熱心にこの山に参詣するので莫大な費用を投じて作られた道路」は、約200年経った今も旧道として残り、標高429メートルにある教会まで徒歩で登ることができます。信者のみならず、週末にはトレッキングを楽しむ人や、なんとロードレーサーの姿も。

モンテ・ペレグリーノの洞窟で、サンタ・ロザリア同様に隠匿生活を送っていたエチオピア人奴隷の両親を持つ聖人サン・ベネデット・イル・モーロの像も置かれている。

 日本人旅行者にはまだあまり知られていませんが、ゲーテをはじめ、バイロンやワーグナーも惹かれ訪れた聖なる山とサンタ・ロザリア洞窟教会。

 先日、パレルモで行われた世界ドキュメンタリー映画フェスティバルに招待された映画「ペレグリーノ」も話題で、この映画によれば、パレルモに暮らすイスラム教徒やヒンズー教徒にとっても聖なる山であり、教会に参詣する異宗教の方々もいるのだそう。

モンテ・ペレグリーノ旧道より、灼熱のパレルモ市街を望む。昨年夏の山火事で多くの木々が燃えたが、生命力と聖なる山の力(?)で緑の息吹を吹き返しつつある。

 長い歴史の中で異国の文化を受け入れ、許容してきた街・パレルモらしさの象徴でもある自由な聖地。訪れると、なんとな~く懐広く受け入れられる感じ……を受けなくもないような……。やはり「何か」あるのかもしれませんね! パレルモを訪れる機会があれば、ぜひ登ってみては?

岩田デノーラ砂和子
2001年よりイタリア在住のライター/コーディネーター/通訳。現在はシチリア州パレルモ在住。イタリア専門コーディネートチーム「Buonprogetto.com」を主宰するほか、個人旅行者向けイタリア旅行サイト「La Vacanza Italiana」を運営。イケメン犬ボン先輩とヤラカシ系イタリア人の夫との日々を綴るBLOG「ボン先輩は今日もご機嫌」が、ただ今人気急上昇中!

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文・撮影=岩田デノーラ砂和子