【プリンス・エドワード島州】

 好漁場で知られるニューファンドランド島に近く肥沃な土地にも恵まれた、美食アイランドを訪ねる。

島の魅力に惹きつけられた
カナダ有数の人気シェフ

◆ The Inn at Bay Fortune
(ジ・イン・アット・ベイ・フォーチュン)

 カナダとアメリカとの国境近く、大西洋に浮かぶプリンス・エドワード島は、セント・ローレンス湾の庭園とも呼ばれる美しい島だ。日本でこの島の話題になると、3名の人物の名前が挙がる。『赤毛のアン』の著者モンゴメリと主人公のアン、そしてこの本を訳して日本に紹介した村岡花子だ。ここにもうひとりの男性の名前が加わる日も、そう遠くはないだろう。

カナダを代表するスターシェフ、マイケル・スミス。身長190cmを超す大男が繊細な料理を作る。

 男性の名前は、マイケル・スミス。1990年代にこの島のホテルのシェフとして名を上げ、料理番組への出演で人気が沸騰した。バンクーバー冬季五輪の総料理長を務めたほか、レシピ集も多数出版している。2015年、マイケルは自分が働いていたホテルを買い取り、リニューアルを施した。ここではプリンス・エドワード島を“美食アイランド”として紹介したい。

 ニューヨークに生まれ、中南米からヨーロッパまで世界中で修業をしたマイケルは、この島に魅せられた理由を「信じられないくらい食材が豊かだから」と語る。ホテル敷地内の広大な菜園を案内しながらマイケルは続ける。

「野菜やハーブは自分たちで育てますし、カキは目の前の海で採れたもの。食材の生産者のほかに島には優れたアーティストもたくさんいて、彼らの作品も紹介したいと思っています」

左:前菜は濃厚なトラディショナル・シーフード・チャウダー。
右:メインはポークロインのグリル。地元の野菜を添えて。
長テーブルを使うのは、家族のような雰囲気を感じてほしいからだとか。

 夕刻、「ジ・イン・アット・ベイ・フォーチュン」のディナーが始まる。宿泊する観光客だけでなく、食事を楽しみに地元の人も集まってくる。海産物からも農産物からも作り手の顔が見え、絶品料理がゲストを笑顔にする。

 プリンス・エドワード島の自然や風土は、モンゴメリ(とアン)の想像力だけでなく、食も豊かに育んだのだ。

腕っ節の強い料理人がデザートを仕上げる。
左:ゲストの子どもたちにドレッシングを作らせる楽しい演出。
右:タワー棟には客室が5部屋。ここは最上階の部屋。

これだけでも楽しい!!
夕食前に前菜をはしご

オイスター・アワーは1時間。19時よりフィースト(宴)と呼ぶディナー開始。

 ディナーの前に、18時からオイスター・アワーが開宴。室内では生ガキ、庭では多彩なグリル料理が供され、飲み物を片手に回遊。満腹にならないよう注意。ディナー込みで125カナダドル。

厚い鴨はタコスとともに。
庭で販売される地元ビール(10カナダドル)。

朝食も豪快!
パンを直火焼き

左:マイケルによれば、FireWorksは「アトリエの位置付け」だとか。
右:FireWorksも石窯もテーブルから見えるので期待が高まる。

 食材にこだわることと並んでマイケルが大事にしているのは、食材の味が生かされる炭火でグリルすること。肉や魚、野菜はFireWorksの直火、パンは隣の石窯でも焼く。

The Inn at Bay Fortune
(ジ・イン・アット・ベイ・フォーチュン)

所在地 758 Route 310, Bay Fortune, Prince Edward Island
電話番号 902-687-3745
客室数 15室
料金 275カナダドル~
http://innatbayfortune.com/

撮影=志水 隆
取材・文=サトータケシ
地図=Cmap
コーディネイト=本山直人(ユーコン)
協力=カナダ観光局、ユーコン準州観光局、プリンスエドワード島州政府観光局