第一の目的は、フランスのガストロノミーを支える職人たちの仕事の価値を、多くの人に知らしめるということ。さらに、売上の一部を、ボランティア団体へ寄付し、クリスマス企画としての意義を高めました。

 べルジュがセレクトしたファイン・フードのメゾンは、全部で45件。特に注目されたのは、“メゾン・ルイ・ジャド”が提供した、1887年のワイン“クロ・ヴージョ”でした。2400ユーロで落札され、すべてが“心の食堂(恵まれない人々に食事を保証するなどのボランティア活動を掲げる団体)”に寄付されました。

 他に、“イヴ・マリ・ル・ブルドネック”によるオーブラック牛は、60日かけて熟成させ、ニッカのウィスキーで香り付けをしたもの。

 “アルマン・ペトロシアン”による“ベルーガのキャヴィア”は、オーナーのアルマン・ペトロシアン自らがセレクトした500g詰めの大きな缶。

 “フォルジュ・ド・ラギオール”からは、80年代にエッフェル塔を改修工事した際に、塔の頂点の解体された鉄を利用して作ったナイフ。

 “アラン・パッサール”からは、パッサールの菜園で作られた野菜のセット、等々、オークションだからこそお目にかかれるレアものばかりでした。

 フォアグラなどの生のものは、オークション当日に到着するなど、通常のオークションでは見られない例外もあり、話題を呼びました。

 ファイン・フードに携わる人々のプロモーションとしてだけでなく、クリスマス用の食材目当てでやって来た人々もいて、年末年始の食卓に彩りを添えてくれる、とてもインテリジェントなイベントとなりました。

伊藤文(いとうあや)
パリ在住食ジャーナリスト・翻訳家。立教大学卒業。コルドンブルー・パリ校で製菓を学んだ後、フランスにて食文化を中心に据えた取材を重ねる。訳書に『ロブション自伝』『招客必携』(いずれも中央公論新社)、著書に『パリを自転車で走ろう』(グラフィック社)など。日本復興支援協会GANBALO代表。

 

Column

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text:Aya Ito