クリスマスマーケットを撮影するコツ その1
「その国の歴史や文化をより深く知る」

「聖ミクラーシュの日」と呼ばれる12月6日前夜には仮装した聖ミクラーシュ役(英語圏では聖ニコラス。サンタクロースは実在したこの聖ニコラスがモデルとなっている)、デビル役、エンジェル役がたくさん街に繰り出し、道々、子どもたちに「一年間、良い子にしていたかい?」と問いただしては、良い子だけにキャンディーやクッキーを配る。

 その国の歴史や文化、生活様式などが色濃く反映されるクリスマスマーケットでは、ツリーやイルミネーションを撮るだけではつまらない。もっと深くて濃~い意味を含んだ写真を撮るために、その国について学ぶ姿勢が大事なのである。

子どもたちはデビル役を怖がりながらも、手作り感満載のお面を見ると笑ってしまうようだ。ミクラーシュ、エンジェル、デビル役などのコスチュームは人それぞれでどれもユニーク。

 このプラハは、かつてのボヘミア王国の首都であり、厳しい歴史を包み込む懐の深さと強さを秘めている。1989年に当時チェコスロバキアに属していたこの地でビロード革命が起き、1993年の分離独立をもって「チェコ共和国」は誕生した。

 激動の歴史にもかかわらず、大きな破壊から免れたため中世の街並みを今に留めるこの都市に対しては、「魔法の都」「百塔の町」など、訪れる人からの賛辞が絶えない。

鯉会社に勤めるゼネック・コブリバさんは鯉の出荷に大忙し!

 クリスマスには鯉を食べる習慣があり、街中に鯉売りの露店がでる。その鯉を買い、自宅のバスタブに水を張ってクリスマスの日まで泥を吐かせる。そして当日はそれをさばいてフライにするのである。このように、その国を知ることは写真を撮る上で役立つ。どこにフォーカスすればよいか、自ずとわかってくるのである。

左:クリスマスに欠かせない鯉料理。
右:街角ではツリー売りがあちらこちらに出没する。

2015.12.16(水)
文・撮影=山口規子