そこはかとなく和を感じるご当地メニューの数々
さて、そんなホイアンのもうひとつの魅力といえば、やっぱり食べ物。ベトナムの麺料理では米の生麺を使った「フォー」が有名ですが、ここホイアンの名物は「カオラウ」です。
カオラウは太い麺の上に野菜や豚肉をのせ、甘じょっぱいタレを混ぜて食べる和え麺。コシのないものが多いベトナムの麺料理のなかにあって、強いコシがあるのが特徴です。そのコシは麺の製造時に、この地にわき出る井戸水を使うことで生み出されているといわれ、そのため本物のカオラウはここホイアンでしか食べられないとされる、まさにご当地メニューなのです。
実はこのカオラウ、日本の伊勢うどんがルーツで朱印船貿易時代に日本から伝わったという説もあります。事の真相は定かではありませんが、ふとしたところに日本とつながる物語が見つかるのも、この街の魅力なのではないでしょうか。
ちなみに、そのほかにも名物と呼ばれるものがありますが、ぜひ試してほしいのが「バインイットラーガイ」です。「ガイ」という草の葉を練り込み色づけした緑豆餡入りのお餅で、ほんのりとした甘さでまるで和菓子のよう。ホイアンの沖合に浮かぶチャム島でガイの葉がよくとれることから、古くからこの地の人々のおやつとして親しまれてきた隠れ名物です。
このようにホーチミンをはじめとしたほかの地域とは少し違った顔を見せてくれるホイアン。旧市街は日中、一部の時間を除き歩行者天国となっているので、ぜひゆっくりと街散策を楽しんでみてください。
杉田憲昭(すぎたのりあき)
ベトナム・ホーチミン市在住のフリーランスエディター・ライター&フォトグラファー。日本で編集者として活躍後、渡越。在ベトナム20年。女性誌や旅行誌、機内誌などの取材・撮影・コーディネートを通じ、幅広くベトナム情報を発信中。
文・撮影=杉田憲昭