バルサミコ酢ができるまで&美味しいレシピ

左:見学をさせていただいたバルサミコ酢醸造所「サンジャコモ」。
右:液体の表面に浮かぶマザーヴィネガー。これによってゆっくりと酢酸発酵していく。

 伝統的なバルサミコ酢の作り方は、まず、ぶどうの果汁をゆっくりと煮詰めたモストと呼ばれる液体を樽に入れ寝かし、アルコール発酵と酢酸発酵をしていきます。その後、その液体を異なった種類の木で作られた6種類の樽に順番に移し替えながら熟成させます。色々な種類の木の樽に入れることによって、奥深い香りがつくのです。

 夏の暑さで発酵が進み、冬の寒い間しっかり休むことで力を蓄え、また暑くなると発酵を繰り返して熟成し、その間自然と蒸発することで液体は濃縮していきます。樽を替え、濃縮と熟成発酵を見守りつづけ12年、さらに寝かせた“Extra Vecchio(エクストラ・ベッキオ)”は25年かけてABTとなります。

左:それぞれ異なった種類の木で作られた樽。これらに順番に移し替えながら熟成していく。
右:生産者協会の認定を受けたABT。

 ようやくできあがったバルサミコ酢は、生産者協会による厳しい品質テストを通過した物だけが、晴れて「Aceto Balsamico Tradizionale」の認定を受けて、ラベルを貼られます。

 このように手間と暇と、そして伝統を守る人々の熱意をかけて作られたABTは、自然の美味しさと力を信じ、熟すまでじっくりと時間をかけた究極の熟成品。芳醇な果実の香りと深く穏やかな森の木々のような香り、濃厚でありながらなめらかな舌触り、鼻を衝くような酸味ではなく爽やかな甘酸っぱさ、まろやかでありながらどこまでも奥深い味わいは、口の中に心地よい余韻を残します。

 まさに自然の美味しさを一滴に凝縮した味わい。調味料でありながら最高級のソース、これに合う素材に一滴たらせばたちまちごちそうのできあがりです。

いちごのバルサミコ酢マリネ。

 最後に、アンドレアさんから、美味しくってとっても簡単なバルサミコ酢を使ったレシピ「いちごのバルサミコ酢マリネ」を聞いてきました。こんな食べ方もあったのか、と驚きの美味しさですので、みなさんもぜひ試してみてください。

「いちごのバルサミコ酢マリネ」のレシピ

【材料】
・いちご:200g
・砂糖:大さじ1
・レモン汁:1/2個分
・バルサミコ酢:小さじ1
・バニラアイス:適量

【作り方】
(1) 約1cmの角切りにしたいちごに砂糖とレモン汁をまぶして、2~3分置きなじませます。
(2) バルサミコ酢を加え、バニラアイスを添えてできあがりです。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック https://www.facebook.com/chococogogo

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文・撮影=藤原亮子