目の前は海。美味しいものがないはずがない。ロケーション、食材、技術、サービス、すべてにおいて最上クラスのレストランが、ここには数えきれないほどある。

 その中から、3ツ星、1ツ星の代表と、星はなくてもサン・セバスチャンの食のクオリティを証明する店を自信をもって紹介する。

» 第1回 サン・セバスチャンの3ツ星代表「アケラレ」
» 第2回 美しさと独創性が光る「ココチャ」
» 第4回 ハリウッドセレブ御用達「ブランカ」

◆ Mirador de Ulía (ミラドール・デ・ウリア)

下に薄く敷いてあるのがアーティチョークのフライ。上にはトロンペッタという黒いキノコがのっている。岩塩と黒ニンニクが利いていてしっかりした味。

 ウリア山のヒルトップにあり、サン・セバスチャンの3つのビーチと街がすべて見渡せる展望レストラン。ありふれたレストランが輝き始めたのは、3代目のシェフ、ルベン・トゥリンカドがマネージメントするようになってから。

「特に何かを変えたということはない。日々、料理を前よりも良くしようと改良を重ねてきただけ」

 言うは易く行うは難し。シェフが毎日入った食材を見てメニューを替えるので、キッチンは大変だ。

 この日は旬のアーティチョークのフライとキノコのサラダが出てきた。塩・コショウの按配が絶妙。「ふうん、で終わってしまう料理はダメ。印象に残らないと」。シェフの望み通り、今思い返してもこの旅のベスト・ディッシュだ。

Rubén Trincado(ルベン・トゥリンカド)

1971年、サン・セバスチャン生まれ。祖母が始めた店を父から引き継ぐ。「ココチャ」や「マルティン・べラサテギ」で経験を積む。2010年にミシュラン1ツ星を獲得した。「“普通”の料理は出しません」

撮影=橋本 篤