正直なところ、那須には大声を上げたくなるようなスペクタクルな観光スポットはない。

 けれども滝の水しぶきを受けたり、馬と見つめ合ったり心が癒やされるような体験をすることができる。大作がひとつだけあるのではなく佳作がいくつも集まっているのが那須という土地の魅力である。

 今回は、癒やしの寄り道スポットのうち、乙女の滝と沼ッ原湿原をご紹介します。

» 第1回 いくつもの顔を持つハイランド・那須を愉しむ
» 第3回 開放感あふれる広大な丘陵で馬と見つめ合う
» 第4回 御用邸そばに凛と立つ隠れモダン温泉宿

■乙女の滝
迫力よりも美しさ。まさに名は体を表す滝

滝壷の近くまで歩ける。ただし滑るので要注意だ。

 白笹山から流れ出る沢名川は、やがて那珂川と合流する。沢名川の中流に位置するのがこの滝。落差十数メートルとそれほど規模は大きくないが、流れ落ちる水が細い線のように見えて実に美しい。

入り口には看板とともに、乙女の滝という名称の由来が記される。曰く、滝壷に落ちる水が乙女の髪のように美しく見えるという説と、滝壷に若い人魚が現れたという説があるという。

 音や水しぶきといった迫力よりも、繊細さを噛みしめるタイプの滝である。駐車場に車を停めて歩けば、滝壷のすぐそばまで近寄れるのもこの滝の魅力だ。滝の下流の遊歩道を歩いて、澄んだ水の流れを追うのも楽しい。

乙女の滝
所在地 栃木県那須塩原市板室703
電話番号 0287-62-7156(那須塩原市観光係)

撮影=柏田芳敬
文=サトータケシ
地図=シーマップ