東京からのアクセスがいい那須は実際の移動距離よりも遠くへ来た気がする場所だ。
豊かな自然とそこから生まれる美食に恵まれたこの地をポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッドで訪れた。
» 第2回 滝の水しぶきを受けマイナスイオンを体感
» 第3回 開放感あふれる広大な丘陵で馬と見つめ合う
» 第4回 御用邸そばに凛と立つ隠れモダン温泉宿
ハイランドの清涼な空気が日々の雑事を流してくれる
東北自動車道を那須ICで降り、窓を開けて気温を確認する。すると、東京とは違う空気が入ってきた。少し冷たくて森の匂いがする、グリーンな空気だ。
浦和の料金所から距離にして約150キロ、時間にして2時間に満たない移動なのに、もっと遠くへ来た気がする。那須IC周辺の標高は約300メートル。標高が100メートル上昇すると気温は0.6度下がるというから、その影響もあるのだろう。今回は、水平方向だけでなく、垂直方向にも動く旅なのだ。
たとえば目的地のひとつである沼ッ原湿原は、標高1200メートルを超える。わずか30分強のドライブで、道の両脇に生える赤松のトンネルを抜けることになるなど、植生は刻々と変化する。日常生活では経験できない、自動車旅行の醍醐味だ。
急な登り坂を駆け上がるポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッドは、いくつもの顔を持つ車だ。街中ではEV(電気自動車)として粛々と走るかと思えば、高速道路ではプレミアムな4ドアセダンの振る舞いを見せる。そしてワインディングロードに入ると、スポーツカーに変身する。
燃費を最優先する日本のハイブリッド車が草食系だとしたら、レースで鍛えたハイブリッド技術を搭載するパナメーラは肉食系なのだ。どちらが正しいというわけではなく、その違いが面白い。
撮影=柏田芳敬
文=サトータケシ
地図=シーマップ