人気に火がついたという出来事とは!?
かつてはコーヒー好きだったのに、カフェインにめっきり弱くなり、ここ数年コーヒーを一切飲んでいなかったジェレミーさんが、イタリアでオルゾ・コーヒーを口にしたのは、わずか2年ほど前のこと。「イタリアの知人の家で、ディナーの後でポットにたっぷり入った褐色の飲み物が出てきて、コーヒーかと思いきや、オルゾ・コーヒーだったんです」。飲んでみたら一度でファンになってしまい、ロンドンに戻ってきて探したものの、同じクオリティのものがまったく見つからず、それならば、とイタリアでの生産者をリサーチ。最高のオルゾ・コーヒーを見つけるために、一日に40杯ものさまざまなオルゾ・コーヒーを試飲したことも。「それだけ飲んだら、普通なら眠れなくなる、って思うでしょう? でもカフェイン・フリーだから大丈夫なんです」とジェレミーさん。
高品質のオルゾ・コーヒーは、素材の麦そのものよりも、ローストの技術によって作られることを突き止め、イタリアはシエナで、お祖父さんの代から同じ焙煎器を使っているという、こだわりの生産者に行きつき、少量での輸入を始めたのが2012年の12月。それまで携わってきたメディア系の仕事をすっぱりやめ、オンラインと週末のマーケットでの販売を始めました。
「マーケットでは、コーヒーのパックを売るために、コーヒーを無料で試飲してもらいました。飲んだ人の4分の3は、『気に入った』と言ってくれましたね」。それでも、マーケットの開催日を除くと、オンラインで週に1~2個の注文があるだけで、まったくビジネスにならなかったとのこと。ところがある日、マーケットの彼のストールに、産休中の女性新聞記者が通りかかったことから、状況は180度の変化を遂げることになります。
「やたらと詳しく、こと細かに質問してくる人だなぁと思ったら、新聞記者だったんですね。この記事が掲載されてから、メールの受信ボックスはクレイジーな状態です。毎日のように200以上の包みを持って、郵便局に通う日々。おかげで、マーケットも続けられなくなりました。文字通り、もう売るものがないのです」。
この新聞記事が掲載されてから、大手スーパーマーケット・チェーンからも連絡を受け、近日に交渉予定だと話すジェレミーさん。イタリアの家庭での密やかな飲み物が、英国のスーパーを席巻する日も、実は遠くないかもしれません。
INNOCENTE
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The Portuguese Conspiracy
所在地 55 King Henry Walk, Dalston, London N1 4NH
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安田和代(KRess Europe)
ロンドンを拠点とする編集プロダクションKRess Europeの代表。現在、ヨーロッパでの生活をテーマとした初めての電子書籍を刊行すべく、準備中。
文・撮影=安田和代(KRess Europe)