1200余年の歴史を誇る京の都は、言わずと知れたわが国の食の都でもある。今回厳選した5軒は、いずれも舌の肥えた京都人を満足させる素敵なお店ばかり……。

» 第1回 茶どころ宇治ならではの至福の京料理 辰巳屋
» 第3回 皇室ゆかりの格調高い名建築 洛陽荘
» 第4回 繊細な美味しさの湯豆腐に感動 豆水楼 祇園店
» 第5回 名刹の門前でいただく洗練の味 平等院表参道 竹林

炭火割烹いふき

素材の頂点の美味しさを引き出す炭焼きの威力

料理はいずれもコース13,000円から。たけのこ、鮑をメインに、空豆などの旬がたっぷり。里山の春の情景に見立てた見事な一皿(写真は2人前)。

 今、京都で予約が取れないお店の一軒として知られるこちらの割烹。旬の素材を巧みな技で炭焼きにし、その頂点の旨みを堪能できるのが人気の理由だ。

 「料理人修業時代から、いろんな食材をどうしても炙ってみたくて……。やっぱり温かい料理って美味しいでしょ」と語るご主人の山本典央さん。ひたすら試行錯誤を重ねて火入れの秘術を自ら習得。もちろん、それを生かすためには丹念な下ごしらえが必要であり、その技術・センスも卓越している。

 鮑は、ふっくら柔らかく煮たものをさっと炙り、人肌のような温かさが得も言われぬ美味しさに。また、人気のすっぽんは、強めの火で表面は香ばしく、中はレアな状態に仕上げ、塩焼き、醤油タレの2種の味わいを楽しめる。

 春から初夏にかけてのこれからの季節は、旬を先取りした新鮮な味覚をぜひ。4月のほんのわずかな期間のみ供されるたけのこは、根っこのいちばん深い部分から丁寧に掘り出し、いわば“生きたまま”の状態のものを仕入れる。とびきりの新鮮さだから、アクもエグミもない。湯がくことなくそのまま炙れば、たけのこそのものの風味を味わえる。

 また夏の風物、賀茂茄子も出始めのものは身がずっしりとして旨さも別格だそう。花見小路の風情ある一角で、美味に感激する時間をゆったり過ごしたい。

バルサミコを加えた濃厚な醤油タレと、シンプルな塩焼きの2種で味わう、すっぽん。女性からの人気も高い逸品。
店内にはカウンター席と個室を用意。

炭火割烹いふき
所在地 京都市東山区四条花見小路南側四筋目東入ル六軒目
電話番号 075-525-6665 
営業時間 17:00~21:00入店
定休日 火曜日

写真=蛭子 真、大島拓也、鈴木誠一、内藤貞保
取材・文=横田典子
構成・文=矢野詔次郎