マリア・テレジアが愛したアウガルテンの磁器工房へ
 
マリア・テレジアが愛用していたという、その名もマリア・テレジアシリーズ。緑だけで描かれた薔薇が特徴

 アウガルテンはマイセンに次いでヨーロッパで2番目に古い歴史を持つ磁器工房です。1718年にウィーン磁器工房として誕生したのち、1744年、ときの女帝マリア・テレジアにより皇室直属の磁器窯として任命されたというから、まさに皇室お抱えの窯元です。日本の百貨店などで見ると、一脚数万円もするアウガルテンのティーカップ。それもそのはず、創業以来今も変わらず、すべての行程を手作業で行っているのです。

 アウガルテンという名は地名からきていて、マリア・テレジアの時代にお狩場だったのだそう。現在アウガルテンの工房があるのは、ハプスブルク家の狩の城館と庭園があった場所。工房では職人たちの作業の様子を見学できるガイドツアーがあるということで、名門窯元に潜入してみました。

ガイドツアーでは、職人たちが絵付けを行う様子も見学できる。一筆一筆、すべて手描きです

 アウガルテンはウィーンの北部。緑豊かな森に囲まれるようにして、白亜の宮殿が建っています。この豪華な宮殿が工房!? まずは外観からびっくりです。ガイドツアーは、まずアウガルテンの歴史や、磁器に使われる素材の説明から。その後、お待ちかねの工房内の見学へと続きます。アウガルテンの磁器のうち、日本でもっとも人気のあるシリーズが、可憐な薔薇の花をモチーフにしたオールドウィンナーローズシリーズ。ハプスブルク家は代々薔薇をモチーフにした柄をディナーセットとして使っています。オールドウィンナーローズは1744年にマリア・テレジアの命によってアウガルテンが皇室直営の窯元になって以来作り続けられている伝統的なシリーズなのです。

 工房では、まさにそのオールドウィンナーローズの絵付けの真っ最中。十数人いる絵付け師にはそれぞれ担当があって、ひとつの絵柄だけを毎日、何年も描き続けるそうです。徹底した手仕事と職人たちの情熱があったからこそ、300年近いときを経た今でも、アウガルテンの伝統がしっかりと守り継がれているのです。

窯に入る前の磁器。厳しいチェックを通過したものだけが、アウガルテンの名を冠することができる

 ガイドツアー終了後には、工房に併設されたカフェに立ち寄ることができます。もちろんサーブされるのは、すべてアウガルテンの磁器。一脚数万円もするであろうティーカップでお茶が飲めるなんて! 一生の思い出になりました。

 もちろんショップも併設されているので、お買いものも可能です。定番のオールドウィンナーローズのシリーズや、シックな絵柄のマリア・テレジアシリーズなど、日本では手に入りづらいシリーズも揃っています。ちょっと値が張るお買いものですが、実際に工房を見学して、その作業の繊細さ、気が遠くなるほどの職人たちの努力を知ると、やっぱり欲しくなってしまいます。そのほかにもアウガルテンの代表シリーズの絵柄を使った紙ナプキンやグリーティングカードなどの小物も揃っているので、意外とお土産探しの穴場かもしれませんよ!

アウガルテン磁器工房
所在地 Obere Augartenstraße 1a 1020 Vienna
電話番号 +43-1-211-24-200
URL www.augarten.at
営業時間 10:00~18:00
定休日 土曜日、日曜日、祝日
●ガイドツアーは月曜~金曜10:15、11:30~
料金 12ユーロ/1名
※上記時間外の個別ガイドは別途予約が必要

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2013.12.15(日)
小林百合子=取材・文
田部井朋見=写真