ジャズをBGMに夜のローマを巡る3時間のショートトリップ

1947年の旧型トラムを利用した移動ライブレストラン「トラムジャズ」の発着場所はポルタ・マッジョーレ広場(21:00発/24:00着)

 21:00少し前。古代ローマの城壁に囲まれたポルタ・マッジョーレ広場に少しずつ人が集まってくる。やがて緩やかにカーブを切って停留所へ滑り込んで来たのはアンティーク・トラム(路面電車)だ。車内から姿を表した2人のカメリエーレ(ウエイター)から、まずは広場で待つ人々にウエルカムドリンクのグラススプマンテが配られる。

まずはウエルカムドリンクのグラススプマンテが参加者に配られる

「トラムジャズ」は、現在、使用されていない1947年の旧型トラムを移動レストランに仕立てあげ、ジャズの生演奏を聴きながら夜のローマを巡ることのできる、なかなか魅力的なイベントだ。適度に照明が落ちたロマンチックな車内。テーブルにぽっかりと浮かぶキャンドル。ふんだんに出されるフィンガーフードとワイン。車窓から眺める夜のローマ。耳に心地よいジャズの音色。そんな粋な演出のせいか、いつも目にしている日常の風景は非現実的な景色に様変わりし、乗車したその瞬間からわくわくした気分に包まれる。

 長年、ローマで暮らす私でさえ、そう感じるのだから、旅行客ならさぞかし思い出深い夜になるのだろうと思いきや、参加者に話を聞いてみると、意外にも半数以上は地元ローマの人々。彼女から彼へのバースデー・プレゼントだったり、息子夫婦から両親への結婚記念日のお祝いだったりと、サプライズ・ギフトとしても大いに活用されているらしい。彼等にとって生まれ育った街の美しさをあらためて確認できる、いい機会なのかもしれない。

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text&photographs:Yukie Muramoto