気まぐれでミステリアスな存在。でも、だからこそ、とにかく愛おしい。

 そんな猫たちとの暮らしを描いたおすすめ漫画を紹介します。猫との生活ってなんて幸せなんでしょう。

「とにもかくにも愛らしい笑えて癒される猫漫画6選(猫の視点編)」を見る


キュルZ『夜は猫といっしょ』

 猫マンガは、猫の生態あるあるを可愛らしくデフォルメする系と、猫を擬人化して人間と面白く関わらせる系、そのふたつが王道だと思っている。

 だが、本書はそれらとはちょっと違うニッチ路線。「猫がいる日常とはどんなものか」や「猫という存在の不思議さと、離れがたさ」を、あくまで淡々と、しかし真に迫って描く世界はありそうでない。

 登場人物も、飼い主のフータと同居人ぴーちゃんの兄妹そして、猫のキュルガと、至ってシンプル。キュルガの表情というか目が特に変化薄めに描かれており、そこがとても猫らしい気がした。

 ちなみに、キュルガという名付けのエピソードは1巻ですぐ紹介されるが、かなり秀逸。これだけでキュルガを好きになってしまうこと請け合いだ。

夜は猫といっしょ 1

定価 1,210円(税込)
KADOKAWA
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おぷうのきょうだい『俺、つしま』

 最初にカバー絵を見たときは度肝を抜かれた。主役たる〈つーさん〉こと猫のつしまが、眼光鋭くこちらを凝視している。

 それでいて、トラ柄の腹巻き……? それまでの猫マンガとあまりに違うビジュアルのインパクトたるや。毛並みやデンとした貫禄がリアルと言えばリアルで、猫好き、猫マンガ好きは、実はこうしたリアリティを待っていたのかも知れない。

 つしまは元野良で、ゴミを漁っていたときに〈おじいちゃん(実は女性ってのが謎といえば謎)〉に声をかけられ、家猫となった。

 先住猫の「ずん姐さん」やあとからやってきた「ちゃー」「おさむ」、さらには野良猫集団「やさぐれ会」の面々など、それぞれのキャラが立っていて、しぐさも習性も猫あるある満載だ。

俺、つしま

定価 1,010円(税込)
小学館
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山村東『猫奥』 

 舞台は江戸末期の大奥。大奥の女性たちは生涯独身で、自分の慰めのために非常に多くの女性たちが猫を飼っていた、という設定だ。

 主人公は滝山という御殿女中(御年寄)で、ふと気づくと、宮中ですっかり「猫嫌い」な人という評判が立っている。その実、滝山は大の猫好きで、自分よりやや格上の上臈(じょうろう)御年寄・姉小路の愛猫・吉野ちゃんに首ったけ。

 吉野ちゃんを触ったり構ったりしたいのだが、周りの目を気にして、表向きは吉野ちゃんのみならずあらゆる猫にひたすらつんけんしている。だからこそ、ひと目のないところで、猫に甘々になる滝山のツンデレぶりを眺めるのが楽しい。

 ちなみに、本書で描かれる猫は、しゃべりもしないし、脳内のつぶやきを吐露することもない。ひたすら猫の生態で生きているさまが描かれているわけだが、そこがむしろ愛らしい。

猫奥(1) (モーニング KC)

定価 704円(税込)
講談社
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2023.02.28(火)
文=三浦天紗子