●「豊田市美術館」(愛知県・豊田市)

 トヨタ自動車の本拠地として知られる愛知県豊田市。自動車の街というイメージが強いですが、ここ最近、フォトジェニックな街としても注目されています。その立役者といえるのが、「豊田市美術館」。人気ドラマのロケ地になったことをきっかけに“SNS映えスポット”として若い世代が訪れるようになったそうです。

 豊田の中心市街地を見下ろす小高い丘の上に立つ美術館は1995年に開館。設計は国内外のさまざまな美術館建築を手がけてきた谷口吉生が担当しました。建物を囲むように広がる2段式の庭園は、アメリカのランドスケープデザイナー、ピーター・ウォーカーによるもの。なだらかな傾斜にスロープや石畳が配されるなど、歩くだけで気分が上がりっぱなし。空を高く感じながら気持ちのいい時間を過ごすことができます。

 庭園には彫刻作品が点在。なかでもフランス人アーティスト、ダニエル・ビュレン『色の浮遊|3つの破裂した小屋』は、“映えるアート”として人気。カラフルな色と鏡で視覚を刺激する作品のまわりには、鏡の映り込みを生かして動画や写真を撮る人々。見る角度で映り込むものが異なるので、ベストショットを探して夢中になるようです。

 屋外での時間を楽しんだ後は館内へ。小さめのエントランスを抜けて中へと進むと、高い吹き抜け空間が広がり、庭園とはまた違う心地よさ。LED電光掲示板が目を引く、階段のインスタレーションなど、展示室に入る前からワクワクさせられます。

 豊田市美術館では、2022年6月7日(火)から、企画展「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」を開催。1910年代~30年代、西欧を中心に世界各地で生まれ、さまざまな形で表現された「モダン」に焦点を当て、これまでまとめて紹介されてこなかった当時のデザイン、装飾芸術、ファッションを一挙に公開。フェリーチェ・リックス=ウエノ(上野リチ)をはじめ、ウィーン工房やバウハウスで活躍した女性作家にも注目します。

 さらに「コレクション展 色、いろいろ」を同時開催。グスタフ・クリムトやエゴン・シーレの肖像画などのコレクションも公開され、なかには写真撮影OKの作品も。“映えるアート”を屋内外で楽しんで。

豊田市美術館

所在地 愛知県豊田市小坂本町8-5-1
電話番号 0565-34-6610
開館時間 10:00〜17:30 (最終入館17:00)
休館日 月曜※祝の場合は開館
観覧料 常設展300円 企画展は展覧会により異なる
※「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」2022年6月7日~9月4日まで 観覧料大人 1,400円
https://www.museum.toyota.aichi.jp/

●教えてくれたのは……
中村美枝(なかむら・みえ)さん

山梨県甲府市生まれ。ライター事務所「JAM SESSION」共同代表。女性誌、旅雑誌、Wabを中心に執筆。好きなものは旅、アート、工芸、スケートボードなど。

2022.06.01(水)
文=中村美枝(JAM SESSION)