東と西の文明が融合し、独特の文化を生み出したシチリア最大の都市、パレルモ。

 複雑な歴史と異文化が混ざり合うカオスが、好奇心を掻き立てる。エキゾティックに薫る、エキセントリックな地中海の十字路へ。

 5回に渡り、パレルモの魅力を紹介。今回は「パレルモのベル・エポックを象徴する典雅なホテル」。

» 第1回 今も残る貴族の館で18世紀のリアルを体感する
» 第2回 1000年の歴史を誇るイタリア最大級の巨大市場
» 第3回 今のパレルモを味わうグルメ最旬アドレス
» 第4回 パレルモのラウンジ・バールでライトディナーを

喧噪を離れた海辺にたたずむ20世紀初頭の典雅な館
グランド・ホテル・ヴィッラ・イジェア

サボテンや棕櫚、南国の木々が茂る庭の先には、青い地中海が見渡せる

 19世紀末から20世紀にかけて、ヨーロッパを風靡したリバティ様式の優美な装飾で彩られたグランド・ホテル・ヴィッラ・イジェアは、マッシモ劇場を建築した名匠エルネスト・バジーレによって、1900年に建設された。依頼主は、当時のパレルモ社交界の花形、フローリオ家4代目当主イニャツィオ。フローリオ家は、カラブリアからシチリアに渡り、マルサラ酒や造船業などの事業を興し、わずか3代でイタリア有数の大富豪となった新興ブルジョアジーだ。

左:暖炉のあるラウンジ・バー・「デ・アルカデス」には、オープンエアのスペースも
右:リバティ様式の殿堂「バジーレの間」。当時から変わったのは電球だけ

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photographs:Atsushi Hashimoto
text:Sawako De Nola Iwata