上質なものが当たり前に揃う豊かさを実感する

 七尾で店を始めて5年目を迎え料理が変わってきた。

 「来たころは能登の食材を使うぞと力が入っていましたが、今はシンプルに地元のいいものを選んでいけばいいと肩の力が抜けました。結果的に料理がより丁寧に、素材に忠実になった気がします」と話す。

 能登の豊富な魚の仕入れは公設市場から、または漁師から直接と種類によって使い分け、野菜は能登島で酵素栽培している農家のものなどを使う。

 秋はきのこ採りの名人から届く、とびきりの山の幸を一皿に表現。

 有永浩太さんのガラス皿、藤井博文さんの陶器、赤木明登さんの漆器など、料理の世界観を作るのに欠かせない器にも恵まれた環境だ。

「他の地域から食材やものを買う必要がなく、自分が納得できるものがすべて揃うのは幸せなことです」

 七尾の町で出会った地元の人が、今度またパーチェに行く、と嬉しそうに話していた。何もないのになんでもある贅沢さが、人々を惹きつける。

Pairing

ペアリング(10品) 8,800円(サ別)から今回掲載した料理に合わせて。ピエモンテのCASCINA DEGLI ULIVI、サルデーニャのMEIGAMMA、シチリアのMARCO DE BARTOLIなど。

◆villa della pace(ヴィラ デラ パーチェ)

所在地 石川県七尾市中島町塩津乙は部26-1地先(渚)
電話番号 0767-88-9017
客室数 1室
料金(1名) 38,500円(1室2~4名利用、2食付き)
http://villadellapace-nanao.com/
※宿泊の営業は金〜月曜 
【レストラン】
営業時間 12:00~、18:00~
定休日 水・木曜
※ランチは不定休

文=CREA編集部
撮影=橋本 篤(オーベルジュ玄珠、villa della pace)、長谷川 潤(L'évo)