海と教会、人と自然が交わる九州最西端のクロスロード

◆五島列島

 5つの主要な島と大小140余りの島々が連なる五島列島は、古くは本土とアジア大陸をつなぐ架け橋であり、海上交通の要でもあった。

 島の大部分は西海国立公園に指定され、外洋は荒々しい海岸線が、内海は穏やかな白砂が島々の間に広がっている。

 九州西端に位置し、中通島と若松島から成る上五島は429キロにも及ぶリアス式海岸に黒潮から分岐した対馬海流が流れ込み、海はどこまでも青く透明だ。

 エメラルドグリーンの海と白浜が続く奇跡のようなビーチ“ハマンナ”や、遠浅の蛤浜の海は波も静かで喧噪とは無縁のサンクチュアリだ。この島では時間の移り変わりによって海の表情が変化するのも魅力のひとつ。

 早朝、空と海の境界に光が生まれ、グレーの世界がコバルトブルーを帯びる江ノ浜郷の海。

 夕刻、オレンジ色に焼ける空を映し出す矢堅目の海。胸を打つ絶景は、しばし瞬きを忘れるほどだ。

 カラフルな上五島の海を見守るように建つ教会は、まるで風景画のように自然に溶け込む。

 世界文化遺産の構成遺産にも含まれる頭ケ島天主堂や、入江の高台にある桐教会、レンガ造りが目を惹く青砂ケ浦教会等、島には趣の異なる29の教会が点在。

 2世紀以上にも及ぶ長い禁教令に耐えた信仰の証として、清らかな光と静謐な雰囲気をたたえている。

 感動的な景色が日々の暮らしにありながら、島の住民は声高に語ることはなく、慎ましい。だからだろうか。ここでは全てが新鮮に感じられ、無垢な気持ちが芽生えてくるようだ。

 滞在するほど故郷のような親しみが湧く島々。色彩の海と教会を巡礼した時、島への思いは祈りと重なる。

文=CREA編集部(奄美大島、加計呂麻島)、粂 真美子(五島列島)
撮影=橋本 篤(奄美大島、加計呂麻島)、原 務(五島列島)