的確かつ文学的で美しい表現 ◎

©「美しい彼」製作委員会・MBS
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 平良が清居について感じたことはナレーションで表現されています。それが文学的で美しく、かつとても的確! 清居に対しての印象や感情を感覚的に理解することが出来ます。

 第1話では、清居について「清居が放つ一言に誰も逆らわない。彼とクラスメイトの時間は1ミリも交差していないみたいだった」と表現するのですが、いかに圧倒的オーラを放っていて際立つ存在であるのかを伺うことができます。

 何よりこのナレーションが流れている時に、清居の真似をして、彼の取り巻きが平良にゼッケンを投げて寄越すような映像が流れているのですが、他の人が清居の真似をしても決して彼のようにはなれないと比喩されているのではないでしょうか。

 彼がどれほど眩しく美しい存在なのかということが、眼だけでなく耳からもすっと入ってきます。

 また、清居が平良の手にマジックで書いた消えかけの電話番号を、「残酷で輝かしい烙印。そこには春の嵐のように美しく、圧倒的な力が宿っている」と表現しています。

 パシリのために書かれた電話番号なのに、番号を知ることが出来て喜んでしまっている感情と、腕を掴まれ至近距離で手に書かれたときの胸の高鳴り(まだ恋心に気付いていないから胸のざわめき?)が深く伝わってきました。

©「美しい彼」製作委員会・MBS
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 第2話では、清居が花火をしているのを見つめている時に「身の程知らずな期待と憂鬱に襟首をつかまれる」とありました。

 自転車の二人乗りをしたり、水を掛け合ったり、二人きりで縁側で過ごしたり……平良にとっては現実なのに夢のような時間。スクールカーストトップの清居に、底辺の自分がこれ以上恋に堕ちてはいけないと頭では分かっている。でもブレーキをかけることが出来ない想い、清居の感情をうまく読み取れない事、自分の伝えたいことを上手く言葉にできない事へのもどかしさが絶妙に表現されています。

 ここまで的確で、さらに手に取るように感情が分かり、かつ文学的で美しい表現があったでしょうか…!? 当たり前に◎です!!

2021.12.01(水)
文=畑井 優