ディオールが愛した18世紀のフランス文化

 また、ディオールの根底にあるフランスの伝統文化に対する敬愛を見ることができるセクションもあります。

 なかにはクリスチャン・ディオールが手がけた人形の服という、めずらしい展示物もあり、彼の18世紀のドレスに対する深い関心を感じさせます。

 ディオールは、ロココ時代に活躍した女性画家エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランに多くのインスピレーションを受けたとされ、ブルックリン美術館所蔵のヴィジェ=ルブランによる肖像画も特別展示されています。

 フランスの伝統が息づく時代にインスパイアされたディオールのスピリットは、メゾンとして受け継がれ、華やかでエレガントな世界を見せてくれます。

 また1947年の初コレクションと共に発表された香水「ミス ディオール」も、フランスが育んできたエレガントで華やかな文化を香りとして表すものとして、大成功を収めました。

高い天井を生かした圧巻のディスプレー

 さらにカラーでまとめたコーナーや、白だけにこだわったコーナーも、息を飲む美しさです。

 ブルックリン美術館の高い天井のスペースを生かして、「パラダイスの鳥たち」といったイメージごとにわけられた展示もドラマチック。

 デザイナーたちは時代によって変われども、メゾンが持つエレガンスと豪華さは、まさにディオールらしい美しさでしょう。

 最後のコーナーには、実際にセレブたちが着こなしたディオールのドレスが展示されていて、最高峰の美しいドレスが、その時代のもっとも輝かしい女優たちを彩ってきたことがわかります。

 20世紀後半から21世紀にかけて、ファッショントレンドを動かしたディオールと、その経済力やスターパワーやファッション雑誌の牽引力を誇るアメリカンドリームが融合してきた足跡をたどれます。

 なにより美しいファッションに、心を癒やされるこの展覧会。パンデミックで失われていた、豪華でエレガントで、夢がつまったものを見ることができる喜びはたとえようもなく、多くのニューヨーカーたちを引きつけています。

 22年2月までの開催ですので、ニューヨークにいらっしゃる際には、ぜひ!

Brooklyn Museum
Christian Dior : Designer of Dreams

住所 200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238-6052
開館時間 11:00~18:00、金・土曜 ~20:00(第一土曜は14:00~18:00)
休館日 月・火曜
入場料 大人25ドル

黒部エリ

ライター、作家。東京都出身。大学卒業後、「アッシー」他の流行語を生み出すなど、ライターとして情報誌から広告まで幅広く活動した後、1994年よりNY在住。ファッション、ビューティー、アートやレストラン、人物インタビューなどなど、旬な情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生でリアルなニューヨーク通信』(文藝春秋)などがある。
https://erizo.exblog.jp/

Column

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文=黒部エリ