ニューヨークのブルックリン美術館で、現在「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展が開催されています。
これはパリ装飾芸術美術館で行われた巡回展覧会で、フローレンス・ミュラーとマシュー・ヨコボスキーによってキュレーションされたコレクションが並び、この機会に初公開されるコレクションもあります。
ディオールが夢みたアメリカンドリーム
ニューヨークでの展覧会での特徴は、ディオールとアメリカの関係にスポットライトを当てていることです。
クリスチャン・ディオールが初の春夏コレクションを発表して、世界をあっと言わせたのが、1947年2月のこと。そしてその年の9月には、すぐにアメリカに渡航したのです。
ディオールがクチュールメゾンを立ちあげて発表した「8の字」を描いた新しいシルエットは、「ニュールック」と呼ばれて、モード界を席巻しました。
時代は第二次世界大戦終戦から、わずか2年後のこと。まだフランスでは服に使える布の面積に厳しい制限があったのに対して、ペチコートで膨らませた曲線を強調したニュールックは、贅沢に布を使用したことでも世間を驚かせたのでした。
ゆったりなだらかな肩に細く絞ったウエスト、ふくらはぎまであるフレアスカートというスタイルで、こうした贅沢な服装に飢えていた当時の女性たちの心をたちまち掴みます。
第一次世界大戦後は、ガブリエル・シャネルがストレートなシルエットで女性たちをコルセットから解放しましたが、第二次世界大戦後には、反対にディオールが曲線的なシルエットで、女性たちの着飾りたい気持ちを掴んだといえるでしょう。
たちまち脚光を浴びたムッシュ・ディオールは、ダラスにあるニーマン・マーカスの招待で、初めてアメリカの地を踏みます。
好景気にわくアメリカで活発な女性たちを見た彼は大いにインスピレーションを得て、5番街にラグジュリアスなレディー・トゥ・ウエアの店舗を開いたのです。
その当時の貴重な映像や資料写真が、今回の展覧会では見ることができます。
文=黒部エリ