僕は振り回される方が楽かもしれないです

――今回、神木さんが演じる編集者の浅見鏡太郎はどんな人なんですか? 『パ・ラパパンパン』の脚本を読んでいかがでした?

 脚本はものすごく面白かったです。ミステリーもコメディーもヒューマンドラマもどの要素も入っています。

 鏡太郎は博学で、少し嫌味なやつです(笑)。基本的には優しいですけど、編集者としてのプライドが高いというか、「僕のほうが(小説を)知っています」という態度でてまりに接しています。後半は、てまりの弱さを知って、少しずつ変わっていくんですけどね。

――鏡太郎は、てまりに振り回されるようですが、神木さんご自身はあえていえば、振り回す方、振り回される方どちらですか?

 僕は振り回される方が楽かもしれないです。人が自分のために動いてくれることに対して、申し訳ない気持ちになっちゃうんです。たとえば、誕生日会を開いてもらうとかは、実は少し苦手。皆さんに時間を割いて来ていただくなら、来てよかったと思えるようなエンターテインメントを提供しなきゃと思ってしまいます。今年、僕の誕生日に配信で、みなさんに祝っていただいたのですが、すごく嬉しかったけれども、「本当にいいの?」という気持ちでいました (笑)。

―改めて、舞台で演じることと映像で演じることは違いますか?
 
 舞台は「お客さんと一緒に作っている感」がありますね。

 僕は自分が観客としてお芝居を観ているときに、舞台と客席は別空間というか、距離があるように感じていたんですが、舞台上から見ると全然そんなことはない。同じ空間ですし、「あなたたちも入っているよ!」という感覚で演じていました(笑)。

――観客も「入っている」んですか!?

 はい。お客さんとの距離はすごく近く感じます。見守っていただいているような気持ちでいました。

 舞台は、空気が一定じゃないんです。演者が場面によって空気を変えることもありますし、お客さんの反応次第でも変わります。真面目なシーンではいい感じにピリッと張りつめますし、笑ってくださると一気に緩みます。

 映像の現場は、物語や展開を知っているキャスト・スタッフしかいませんから、予想外の空気になることはほとんどないです。役者の芝居のやりとりで場面の空気を変えることもありますが、それが使われるかどうかは監督次第。その時点では(芝居の)正解はわかりません。

――なるほど。

 でも舞台は、僕らが稽古を重ねて自信を持ってやることでも、ときには「あれ? 何か違った?」と思わされるような反応がお客さんから返ってくる日もあるんです。リアルタイムで結果が出るんですよね。

 僕は学生時代、学校でも冗談を言ってよくスベっていましたけど、何百人、何千人の前で大スベりしたのは初めてです(笑)。

――それは怖いですね。すぐにリカバリーできたんですか?

 その時は心を無にしました。それ以上あがくと大変なことになるから、被害を最小限にしようと、何事もなかったかのように続きのセリフを言いました。舞台上で岩井さんと目が合って、あとで楽屋で「怯えていたよね」と言われました(笑)。

 あんな怖いことは映像の現場ではありえませんから。

 でも、そこが舞台のいいところなのかもしれません。映像では放送後、公開後にしかお客さんの感想は聞こえてきませんが、舞台はその場で結果が出るので、いままでしたことのない新たな会話をお客さんとしているような感じがしました。

――逆に観客と通じ合えたとき、ギャグがウケたときの喜びは格別なのではないですか?

 最高です。

 ただ、そこで「嬉しい!」という気持ちで満たされると、役の感情から離れてしまって「次、何だっけ?」ってセリフを飛ばしそうになるんですよ(笑)。

 稽古で積み重ねて作ってきた感情の流れがあり、それに沿ってセリフを言うので、「嬉しい」に浸っていてはいけないんです。

2021.11.02(火)
文=黒瀬朋子
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=☆MIZUHO☆(vitamins)
スタイリスト=JUNSHI