水も樹木も豊かな東北で暮らし、物作りに携わる作り手たち。広大な土地ゆえ、住まいも人との関係も程よく距離をはかりやすいのだろうか。

 各々の縁でその地に根をおろし、朗らかに黙々と暮らしの道具を作る彼らの作品を生み出す姿と個性が光る作品を通じて、東北の魅力を感受したい。注目の作家7人をご紹介。


木工の常識に縛られずエレガントな作品を生む

◆北山栄太(きたやま・えいた)
[宮城・木工家]

 木は反る。だから扱いが難しい。作るのに手間もかかるからそこそこ高価にもなる。使い方がハードになるレストランなどでは扱いにくい素材だが、北山栄太さんのエレガントな皿とカトラリーは多くの料理人を魅了する。

 店舗内装の仕事をしていたとき、テーブルの脚を自分で作りたい、と木工旋盤を入手する。同じ機械で皿が作れることが分かり、「これだ!と思ってどっぷりはまりました」と、満面の笑みを浮かべる。

 技術は独学。予想外のことにもたびたび遭遇したが、“知らない”を武器にした。

 木は染められると知り、思い出したのは幼いころに遊んだ祖父の家の美しい椿の花びら。早速、花びらをかき集めて煎じ、その液に浸けた。普通の木工家は、木の反りを減らすために木を乾燥させるのに必死なもの。

 水に浸すという無茶な行為をしたが、時間が経てば反りは戻った。常識に縛られずに、自分なりの方法を考えた。ガラス塗装を施すことを始めたのは、水濡れを気にせずに使ってもらえるように、との思いから。

 フランスアンティークに惹かれるという北山さんの器は、飾って満足してしまうほどの美しさだが、試行錯誤の工夫から「気づけばいつも手にとり使う物」となった。

 工房から東松島の海まで車で20分。

「毎朝4時前に起きてサーフィンをするんです。この時間があるから、頭をクリアにできるのかもしれません」

 東北に来て、木が身近なものになり、クリアな気持ちで制作を続けている。

北山さんの作品はホームページのstockistより購入可能

https://www.eita-kitayama.shop/

●直近の展示会:2021年11月13日(土)~21日(日)/京都「essence Kyoto」
https://essencekyoto.com/

北山栄太(きたやま・えいた)

1977年兵庫県生まれ。服飾専門学校で縫製を学んだ後、鉄工所にて内装、外装などを学ぶ。2006年2級建築士免許取得。2016年より作家活動。2019宮城県に移住。

Feature

様々な個性が光る作品を生む
東北の煌めく作り手たち

Text=Akiko Hino
Photographs=Wataru Sato