香港人のお目当ては「鶏碗」
オークションで取引され、鑑賞用である骨董よりも新しく廉価な近代の食器は、市民コレクターが最も多いジャンルといえるだろう。
ところが、あまりにコレクターが増えて、最近ではキャットストリート周辺にもあまりいい状態のものが出て来ない。
そんな折に昨年リタイアした梁さんが豊富な在庫を誇るショップを開いた。
子供の頃にはよく見かけた食器をもう一度手に入れたい、と押し寄せる香港人のお目当ては「鶏碗」と呼ばれる雄鶏と花の描かれた、厚手のどんぶりだ。
おかずや麺、お粥用として、以前は普通に街角でも見かけた。
今でも探せば金物屋で売られているが、手描きは激減。
雄鶏の様子は時代を反映しており、痩せたもの、太ったもの様々な種類がある。
梁さんの所では、自分だけの手描き鶏碗を手にいれようとする市民が後をたたない。
香港人の心の茶碗である鶏碗にそれほど執着しない外国人にも様々な選択肢があるのが嬉しい。豊富な染付け、青磁、天目、紫砂だけでなく文革時代の標語入り等、焼き物の種類は多岐にわたっておりきっと気に入るものに出会える筈だ。
かつて深い知識の無いまま、移民する骨董店のコレクションを受け継いだ事からこの道に入った梁さんだが、今では手元にあるすべての焼き物について柄や来歴を語る事ができるという。
その知識を、訪れる人々と共有したいという梁さんの宝物庫は、ショップであると同時に熱心な市民の文化交流の場でもある。
訪れる際には、お宝ハンターとしてではなく、食器の歴史に触れる静かな気持ちをどうか忘れずに。手にしたお気に入りの由来を聞けば梁さんが心良く答えてくれるはずだ。
古老十八代 飲食茶具故事館 (ギャラリー)
雞公碗舊貨場 (ショップ)
住所 香港新界火炭山尾街37號華楽工業中心D座1140室
営業時間 ショップ13~18時。金~日曜の週3日間のみ(要注意)
※ギャラリーは要事前予約(Mr.Leung)
URL www.cockbowl.hk/index.do
久米美由紀(くめみゆき)
東京より香港暮らしの方が長くなった在住フォトグラファー。街中だけでは飽き足らず、海の底、山の中のモノまで撮って、食べ尽くします。
text&photographs:Miyuki Kume